ねおでっど日記

間違いなくたぶん、個人の主観です

Gypsy & The Catというメルボルンの奇跡

Gilgamesh

Gypsy & The Cat「Gilgamesh」★★★★★


涙腺崩壊系青春ポップ

今宵紹介するのは、オーストラリアはメルボルン出身のGypsy & The Cat。
元々メルボルンのClubでプレイしていた2人のDJが結成したバンドである。
彼らはこれまでに2作品をリリースしているのだが、とりわけ出来の良かった記念すべき1stアルバム(2010年発表)にスポットを当ててみたい。

アルバムタイトルは、Gilgamesh。
生真面目で奥手な私などは思わず深夜放送の伝説的下ネタ番組をイメージしてしまうのだが、そんなイジリー世代に直球ど真ん中ストライクな楽曲が目白押しの作品でもある。
簡単に1曲目から解説していこう。

01「Time To Wander」:オープニングを飾るのは3連音符で始まるシングル曲。彼ら特有のノスタルジック系美旋律と癖のないVocalがいきなり素晴らしい。少々トリッキーなサビには誰もがポジティブなヴァイブスを感じることだろう。

02「The Piper's Song」:牧歌的なギターのイントロが印象的な色彩豊かなポップソング。サビにおける裏声的歌唱力が切ない1曲でもある。

03「Jona Vark」:本作の代表曲であり、Gypsy & The Catの最高傑作とも言えよう。極めてシンプルなアレンジに、甘く切ない美旋律が踊り、それをノスタルジックなコード進行で魅了する奇跡の1曲。

04「Gilgamesh」:アルバムタイトル曲だけあってクオリティは折り紙付き。物語性のある展開をミドルテンポで魅了する憎いアレンジが光る。The Cranberriesあたりが好きな人ならこの曲の持つ涙腺破壊力をきっとご理解頂けるだろう。

05「Sight Of A Tear」:こちらもアルペジオのメジャーコードで始まるミドルテンポの1曲。曲全体を優しく包む大陸的な雰囲気がたまらなくセクシー。

06「Human Desire」:ここで初めてDJらしい打ち込み系楽曲が登場。ニューウェイヴの影響を受けたような音使いは昨今のNu Discoの隆盛を反映しているかのようでもある。

07「Parallel Universe」:ピアノをメインに空間の広がりを感じ取ることが出来るバラード調の楽曲。サビが少し弱め。

08「Breakaway」:どこか80年代を彷彿とさせるエレクトロ・ポップ。しかしこれもサビが弱い。

09「Watching Me, Watching You」:「Gilgamesh」や「Sight Of A Tear」系のミドルテンポな青春ポップソング。この居心地の良さは他のバンドではなかなか味わえない。恐らく不快な音色が皆無であるということ、これが大きい。

10「Running Romeo」:アルバム唯一のアップテンポな楽曲。かと言って無駄に騒がしい曲ではなく、どこまでも耳に優しいサウンドに心安らぐ1曲。

11「A Perfect 2」:終曲はアコースティックなアンプラグド系バラード。パンチ力はないが、アルバム全体の世界観を崩壊させることなく、上手く締めたと思う。

特にオープニングから5曲目までの展開は特筆すべきもので、中盤で多少ダレるものの、全体的にはよくまとまっている。
サウンドプロダクションとしてはもう少しクリアな方向に頑張って欲しい気持ちもあるが、この曲調なら少しボヤけていた方が逆に味があって良いのかもしれない。
基本的にはどの楽曲も同じベクトルを向いて制作されており、DJユニットとは思えないアナログ感も注目に値するだろう。

そもそもオーストラリアという土地は以前からエレクトロ系に強く、例えばInfusion、Pnau、Empire of the Sunなどはご存知の方も多いはず。(特にEmpire of the Sunは3年の沈黙を破って来月に新譜を発表するということで、私もかなり期待している。)
Gypsy & The Catの音楽はどちらかというとエレクトロというよりはロックの系譜に近く、すでに述べたようにThe Cranberriesなどと同列に語るべき存在なのかもしれないが、たった2人でこのような音楽をクリエイトしたことは、甚だ驚異的だ。
しかもリスナーの郷愁を刺激するメロディセンスや音色の選び方、そしてシンプル且つ大胆なアレンジは簡単に真似出来る類いのものではなく、彼らが本当に才能豊かである証左として本作の存在価値は非常に高いものがある。

残念ながら2作目となるアルバムの出来はすこぶる良くなかったので、私としては彼らに意気消沈しているのが実情だが、しかしこの1stアルバムは青春ポップの王道において見過ごすことの出来ない作品であり、ロック畑からもエレクトロ畑からも注目されて然るべきだろう。
涙腺崩壊系とは言い過ぎかもしれないが、アルバムを通して聴けばその意味が少しでも伝わるのではないだろうか。

願わくば、この1stアルバムに匹敵する作品の登場に期待を持ち続けたいと思う。
後にメルボルンの奇跡と揶揄されないように、Gypsy & The Catは今が踏ん張り時だ。
結成から5年目、彼らの真価が問われるのは今年か、それとも来年か。
今はただ、新作の発表が待たれる。





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