ねおでっど日記

間違いなくたぶん、個人の主観です

冷静と情熱の間にあるソウル(Fitz & The Tantrums)

More Than Just a Dream

Fitz & The Tantrums「More Than Just A Dream」★★★★★


ネオソウルの産声

ソウルと言えば最近何かと話題の南朝鮮にある首都、、、ではなくて、今夜はソウルミュージックの話をしよう。
一口にソウルと言っても、その意味は広義で解釈される場合が多いと思う。
例えばアメリカ発祥のゴスペルやブルースの発展系として、Earth, Wind & Fireなどによる70年代付近のFunk系Discoムーブメントや、近年ではR&Bなども含めたアダルトコンテンポラリー系も含めた上で語られるなど、現在進行形で進化の途上にあるジャンルだ。
歴史も長く、言い換えれば伝統あるジャンルとも言え、これは見方によっては保守派が多いという推測も可能だ。
現在でも勢力的に活動するソウルの女王Aretha Franklinの姿を見れば、この辺は恐らく誰もが納得するのではないかと思われる。

さて、今回紹介するバンドはそんな伝統あるジャンルに真正面から取り組んでいるアメリカ出身のFitz & The Tantrums。
2008年の結成以来、2010年に1stアルバム「Pickin' Up the Pieces」を発表、今年の5月には2ndアルバムとなる「More Than Just A Dream」がリリースされた。
この最新作では保守と革新が入り混じったニュースクール・オブ・ソウルとも言うべき着実な音楽的成長が見られ、この日本でも必ずや知名度を上げていくきっかけになる作品ではないかと私は推測しているのだが、まずはいつものように1曲ずつ見ていきたい。

01「Out Of My League」:本アルバムがリリースされる前の先行シングルとなったキャッチーな1曲。地元アメリカのAlternative Songsチャートでは14位と、彼らにとっては過去最高位を記録。Nu Disco系のRobynにも通じるポップナンバーだ。

02「Break The Walls」:Indie Rockらしい素直で伸びやかな旋律が印象的。思わずFun.の「We Are Young 」を思い出してしまう内容だが、Cメロを女性Voに担当させる演出などアレンジ面も上手く作用しており、この点は1stからの成長を強く感じさせる部分でもある。

03「The Walker」:こちらはまるでFoster The Peopleのように明るめなポップソングだが、ソウルフルなVoのおかげでメリハリの効いたリズム感が生まれ、それが終盤まできちんと保たれているのが好印象。サックスやオルガンの使い方も効果的で、新しさの中にある伝統をほのかに匂わす良曲といったところ。

04「Spark」:The Black Keysの音楽をFitz & The Tantrumsなりに再現したかのようなFunk系ロックナンバー。この出来は相当に素晴らしく、率直に言って本作を代表する1曲だと思う。思わずこちらの体が動いてしまうようなRockの根源的な躍動感が存在している。サビも良い。

05「6am」:熱くなった体を一旦冷ますかのように、R&B的に展開するスロウでメロウな1曲。コード進行及びメロディ運びが自然体なので心地良く身を任せることが出来る。

06「Fools Gold」:2曲目に似た雰囲気だが、さらにこちらはドラマティックにビルドアップしていくアレンジがお見事。このバンドの中心にあるのはあくまでも歌であり、楽器が前に出過ぎることがないので、よりソウル的な美的世界観を堪能出来る算段だ。名曲である。

07「Keepin Our Eyes Out」:こちらも中盤のCメロがクレバーな1曲。全体的にオーソドックスなアレンジだが、必要最小限の楽器のみで歌の邪魔をしないところは流石の一言。

08「Last Raindrop」:ガラリと雰囲気変わってマイナーコード主体の楽曲だが、そこには陰鬱さの欠片もなく、Fitz & The Tantrums流のソウル処理が施されて終始居心地の良いムードミュージックを楽しめる。シングル曲とはまた違った雰囲気がGood。

09「House On Fire」:イメージで言えばタランティーノ映画に使われそうな1曲。この曲がもしパルプフィクションのどこかに使われていたとしても、きっと違和感はなかっただろう。ネオソウル、ここに極まれり!

10「The End」:終曲ではないのだが、曲名はジ・エンド。ドライブ感のあるリズムに女性Voとピアノ演奏が淫らに絡む大人な1曲。

11「Get Away」:本作では唯一3分を切る曲だが、4曲目「Spark」に匹敵するFunk系グルーヴが素晴らしい。どこかで聴いたかのようなデジャヴ感もあるが、ところどころで新鮮さを感じさせるところはこのバンド特有の不思議な魅力だろう。

12「MerryGoRound」:終曲はバラードかと思いきや、2曲目や6曲目と同じベクトルの向きを持ったFitz & The Tantrums流の賛美歌的ソング。明日への希望を強く感じさせる終わり方が彼らの好感度をさらに上げる結果となったのは計算通り?

結論として、素晴らしい仕上がりだと思う。
保守と革新、言い換えるなら懐かしさと新しさを絶妙なバランスで配合した結果がこの作品に集約している。
どの曲も根底にあるスピリットはソウルであり、実際、フロントマンの歌唱力も力強く頼もしいが、だからと言ってソロシンガーのように前に出過ぎることもない。
これはバンドとしてそれぞれのメンバーが自らの役割を忠実にこなしているからこそ可能となった世界である。
若いバンドにありがちな「俺が俺が」感がなく、まるでベテランのように落ち着きある佇まいにはこちらも素直に驚いてしまった。
これが結成からまだ5年しか経っていないなど誰が信じられるだろうか。

インディーズ系とはいえ、今後の活躍がますます楽しみなアーティストであり、願わくばアシッドジャズの火付け役となったIncognitoのように、ネオソウルという新たなソウルミュージックの旗手となって欲しいと思う。
そんな夢や希望を感じさせてくれるバンドである。

喩えるなら、冷静と情熱が同居する狭間に、垣間見える熱いソウルの塊。
これは癖になる。

下記リンクよりアルバムを全曲試聴出来るので興味のある方はどうぞ。

Fitz & The Tantrums「More Than Just A Dream」全曲試聴





More Than Just a Dream
Fitz & The Tantrums
More Than Just a Dream
曲名リスト
Amazonで詳しく見る
by G-Tools