ねおでっど日記

間違いなくたぶん、個人の主観です

酒と泪と男とキラキラ(The Sound Of Arrows)

Voyage

The Sound Of Arrows「Voyage」★★★★☆


Found A Brave New World!

私はゲイではない。
しかし、普段からゲイカルチャーには一目を置いているし、むしろ音楽的には好みである場合が多い。
二十歳以降、特にDJとしてClub Musicに関わるようになってからは、ほぼ肯定的にそうした文化を受け入れている自分がいる。

かつては小学生の頃に、QueenやPet Shop Boysに没頭し、後に彼らがゲイであったことを知らされるが、当然ながらそれが元で忌み嫌うようなこともなかった。
むしろこのような繊細な世界観を表現出来るところに畏敬の念を覚えたほどだ。

音楽は国境も人種も、そして性別も、全てを越えたところで評価されるべきである。
ごく一部のアーティスト及びファンの中には同性愛を非難するようなアクションも見受けられるが、これは恥ずべきことだ。
それによって素晴らしい音楽と出会える機会を自らで失っているのだがら。

さて、今宵紹介するスウェーデン出身のThe Sound Of Arrowsは、男性2人組のユニット、いわゆるデュオである。
そして、ゲイである。

音楽的にはNu DiscoをベースとしたElectricなSynth Popが主体だ。
具体的には80年代風の艶やかなシンセを前面に押し出しながら、昨今のTrance系楽曲などからアイデアを拝借し、Pet Shop Boysのような普遍的な多幸感を狙った作りである。

結成は2006年だが、「Into the Clouds」という1stシングルがリリースされたのは2009年のことである。
それから待つこと2年、デビューアルバム「Voyage」は2011年にようやく日の目を見た。
この流行目まぐるしい音楽業界において、少しマイペース過ぎやしないかと、私などは余計なお世話に不安を抱いたりもしたものだが、本作を聴いた瞬間、それは見事に杞憂に終わった。
この作品には確固たる意志に基づいた極上のポップスが存在する。
一見それは華やかで、しかし思慮深い哀愁性を持ち、まるでファンタジー映画のエンドロールのように心地良いものだ。
そしてノスタルジックが同居するメランコリックな趣きは、恐らくこの手のジャンルが好きな人にはたまらない音楽性であろう。
1曲目から簡単に解説したい。

01「Into The Clouds」:オープニングを飾るのは1stシングルにして彼らの代表曲。Club Music界隈でも話題になった曲だが、特にFear Of TigersによるRemixは群を抜いており、原曲以上に原曲に忠実な、21世紀型Nu Discoのアンセムである。

02「Wonders」:Trance系楽曲によく見られるシンセの展開を施し、まるでPet Shop Boysのようにフックの効いた楽曲である。歌詞も好印象。後にシングルカット。

03「My Shadow」:イスラエリーなアラビア音階のイントロが印象的なミディアムテンポのエレクトロ。不快な音色が一切なく、語りかけるように歌うVocalは往年のFleetwood Macに似た雰囲気も。

04「Magic」:こちらもシングルカットされたキャッチーな1曲。合唱系のサビがポジティブ感満載で素晴らしい。ブレイク後のアレンジも秀逸。

05「Ruins Of Rome」:バラードのように緩いBPMから迸る80's感が心地良い1曲。人肌を優しくなでるような感覚に目眩さえ覚える。

06「Longest Ever Dream」:こちらも80's的なシンセベースを駆使したThe Sound Of Arrows流のシンセポップ。Aメロは女性Vocalというアレンジも効果的であり、歌詞の世界観が一層引き立つ結果となっている。

07「Hurting All The Way」:アルバムのジャケットデザインとリンクした壮大なバラード。2分半にも満たないボリュームが惜しまれるが、間違いなく本作を代表する楽曲である。

08:「Conquest」:2曲目の「Wonders」と似た雰囲気を持ったミディアムテンポの1曲。どちらかというとルーマニアのポップスに近い印象を持ったのだが、いかがだろうか。

09「Nova」:こちらも後にシングルカットされた1曲。アルバム終盤において、1曲目「Into The Clouds」と甲乙付け難いクオリティには正直驚いた。シンセのメロディ運びも素晴らしい。

10「There Is Still Hope」:最近で言えばBon Iverの「Beth/Rest」のようにドラマティックで清涼感あふれる内容に仕上がっている。直球気味なタイトルも好感触。後半にかけてビルドアップしていくアレンジは私の好みでもある。

11「Lost City」:ラストはVocalなしのインスト曲。Vangelisのような世界観はファンタジックな本作を締めくくるにふさわしいエンドロールだ。そして1曲目と同じKeyで終わる憎い演出には思わず拍手。

以前、ノスタルジックについての記事を残した記憶があるが、本作はその辺りの神経を大変に刺激する快作である。
つまりはノスタルジックに敏感な30代以上の心の内面に強く訴えかけるアルバムと言ってもいい。

もちろん、Club Musicとしてお酒も似合うことだろう。
また、哀愁帯びたドリーミーな旋律はところどころで泪も誘う。
そして共通するのは朝日に照らされた水面のように、それはそれはキラキラとした世界観である。

この世界観がゲイである男性2人組によってもたらされた事実。
これら全てを真正面から受け止めて初めて、The Sound Of Arrowsの音楽は昇華していくものだ。

端的に言って素晴らしいサウンドである。
Nu Disco、Synth Popあたりが好きな人は今すぐにでもチェックして欲しい。
来るべき2ndアルバムの発表まではまだ時間があるはずだ。
このクソ蒸し暑い夏、彼らの爽やかな音楽に身を浸すのも決して悪くない選択だろう。

最後に、本作の歌詞カードに記載されていた彼らからのメッセージを転記して本日の記事を締めたいと思う。
毎度ながら、私の下らない長文にお付き合い頂いている方には、これを持って暑中お見舞いとさせて頂く。
いつも、ありがとう。



In The Darkest Of Days.
One Dreams The Biggest Of Dreams.
Close Your Eyes and The World Is Ours.



オリジナルver.


リミックスver.



Voyage
Sound of Arrows
Voyage
曲名リスト
1. Into the Clouds
2. Wonders
3. My Shadow
4. Magic
5. Ruins of Rome
6. Longest Ever Dream
7. Hurting All the Way
8. Conquest
9. Nova
10. There is Still Hope
11. Lost City

Amazonで詳しく見る
by G-Tools