ねおでっど日記

間違いなくたぶん、個人の主観です

愛しさと切なさと心強さと、CTS

CTS「Yume Be The Light」 ★★★★★


J-Popの救世主として

ちょうど半年前に「和製EDMの夜明けを感じる1枚」としてこちらでも紹介したCTSの新作が届いた。
とはいえ、フルアルバムではなく、あくまでもEPとしての単発的なリリースであるのだが、随所に細かいクオリティアップが散見されていたので、再び取り上げてみようと思う。
ちなみに私のEDM観については過去の記事をご参照頂くこととして、いつものように長い前置きなどは今回省きつつ、早速本題から始めたい。

めでたくメジャーデビューとなる本EPに収録されている楽曲は計7曲。
うち4曲はタイトル曲でもある「Yume Be The Light」のRemixと1stアルバム収録「No Reason」のClub Editである。
つまり、CTSとしての純粋なる新曲は「Blue Skywalker」、「Yume Be The Light」、「Hope」の3曲ということになる。
それでは1曲ずつ見ていこう。

01「Blue Skywalker」:往年のイビザ系Tranceを想起させる単音系シンセの音色が贅沢に使われた1曲。一見静かなオープニングだが、Vocalがリズムと絡み出してからの疾走感は軽快そのものであり、加えて中盤の哀愁感漂わせるブレイクの存在によって、曲全体がグっと引き締まり、総じてメリハリのついたアレンジとなっているのが好印象だ。あくまでも基本的なリズムはClub Music的でありながら、それを耳障りに感じさせないところも良い。1stアルバムの楽曲で言えば「Fantastic Dislike」と「Progressive Precious Loneliness」の良いとこ取りな雰囲気を漂わせる内容だ。

02「Yume Be The Light」:タイトル曲ということもあるが、間違いなく今の、そして今後のCTSを代表する1曲と言えるだろう。それはつまり、J-popとClub Musicの親和性を肌で感じることが出来るという意味だが、もっと分かりやすく言えば、極めて和洋折衷な楽曲であるということ。例えば、最初のサビの後に訪れるアッパー系のHouseのリズムは明らかに近年の海外製EDMを意識したものであるし、かと思えばAメロ、Bメロ、そしてサビにおける美旋律は日本人好みに構築された、所謂哀愁系である。それらを彩るシンセの音色も派手さの一歩手前できちんと抑制されており、これはアレンジ作業が上手くコントロールされていることを意味している。1stアルバムを聴いた時、私はこのアレンジ能力がCTSの今後の課題になるだろうと感じていたのだが、僅か半年で見事に成長の一歩を踏み出してくれたように思う。Cメロ(正確にはBメロか)の存在も嬉しい。

03「Hope」:上記2曲とは打って変わって、落ち着いたBPMで展開するエレクトリックなシンセポップ。1990年代以降のTranceミュージックに明るい人ならすぐに直感すると思うが、この雰囲気、世界観はハウシートランスを推奨していた頃のTiestoそのものである。今やEDMの代表的人物であり、もはやラスボスのようにその存在感が膨れ上がってしまったTiestoだが、美的世界観のフィールドで活躍していた頃はこうした楽曲が多かったように思う。もちろん「Blue Skywalker」や「Yume Be The Light」に比べると、確かに地味に聴こえる楽曲かもしれないが、CTSが明らかにその頃のTranceミュージックをリスペクトしているのが如実に分かる1曲でもある。

今回の作品、iTunes限定でのリリースということだが、機会損失の可能性を考えるとCDで出さないのは少しもったいない話である。
なぜなら、本作は1stアルバムの時に感じた物足りなさや不満点がきちんと改良されているからだ。
ファンならずとも、こうしたClub Music的なポップスを求めている方にとっては極めて最適な音源と言えるのではないだろうか。

また、本作によってCTSの方向性がさらに明確となっていたことも付け加えておく。
具体的には、形骸化したJapanese Tranceによって終止符が打たれた日本における4つ打ち系Club Musicシーンの復興である。

これはCTSの楽曲を分析するまでもなく、その世界観や雰囲気から独特なノスタルジーを漂わせていることからもお分かりだろう。
このノスタルジーはおよそ15年前のデジャヴであり、つまりCTSがやろうとしていることは、その昔System FやArminなどが礎を築いたEuphoricなTrance系音源から派生したワールドワイドなClub Musicの再構築にあるのだ。
Euphoric Tranceはその名の通り、ヨーロッパにおいて今でも根強い人気を誇るジャンルだが、日本では安易なコピー化が進み、やがてそれはメジャーレーベルの参入によってJapanese Tranceとして全国規模の流行となり、その後様々な要因(パラパラなど)で結果的に廃れてしまったことは記憶にも新しい。

CTSはあえてそこに着目し、日本独自のEDMの形として、所謂「口ずさめるClub Music」を推進している。
もちろんそこには最新の海外製EDMのスパイスも加えながら、まるで懐かしさと新しさが同居したような、ある種レトロモダンな音楽を生成していることは注目に値する。

正体不明の覆面ユニットということで、Daft Punkの二番煎じ的な批判も巷では見受けられるが、中身は全くの別物であり、その音楽性及び方向性故に、比較すること自体がナンセンスだ。
そもそもClub後進国でもある日本において、あえてClub Musicのポップス化という十字架を背負い、あくまでも大衆に受け入れられる音楽を模索し、J-Popの新たなスタイルを市場に提供するCTSの姿は、今の時代だからこそ一見の価値ありだと私は思う。

本作はEPのため収録曲数こそ少ないが、Trance系音色の愛しさと、日本人の琴線に触れるメロディの切なさと、ポジテイヴな歌詞の心強さはきっと多くの方に伝わることだろう。
Trance系DJとしてのキャリアを持つ私も、彼らが目指すJapanese Dance Musicの行く末は、この目でしっかりと見届けたいと思う。





以下、iTunes Music Storeにて絶賛発売中である。
興味のある方は下記リンクからどうぞ。

CTS「Yume Be The Light EP」- iTunes Music Store