ねおでっど日記

間違いなくたぶん、個人の主観です

Keaneの無期限活動休止について

Best of Keane


Keane「Best of Keane」★★★★★


KeaneとColdplay

2013年で私が最も悲しかったニュースと言えば、Keaneの無期限活動休止、これに尽きる。
その前年である2012年にリリースされた4作目「Strangeland」の出来は、彼らにとってもUKロック史上においても過去最高レベルの品質だった故に、突然の活動休止の一報にはただただ驚き、ファンの1人としては呆然と立ち尽くすほか術がなかった。
それはまるでBOOWYが人気絶頂期に解散を宣言したかのように、当初はメンバーの真意が理解出来ず、この私も悶々とした日々を送ってしまったぐらいだ。

おお、Keaneよ。
何とも間抜けな響きのバンド名だが、その音楽性はG線上の大英帝国サウンドとも言うべき、古くはビートルズから続く普遍的なメロディアスロックの王道がそこにある。
そして驚くべきことに、この様式美は1作目の「Hopes And Fears」から現在に至るまで、一瞬もブレることなく保持されてきた。
片や同期的存在でもあるColdplayが、1作目から2作目、そして3作目にかけて大きくその音楽性を変えてきたことはファンの間でも周知の事実である。

単純にそれが良いか悪いかの話ではない。
結果論で言えばColdplayはその方向転換が功を奏し、セールス的にも大成功を収めたのだが、ロックバンドとしての品格それ自体は若干ではあるがKeaneに分があるような気がしている。
そう、ブレない姿勢という1点において。

もちろんこれは勝ち負けの話でもない。
他人同士の集合体であるバンドという小さな組織において、メンバー間の意思統一ほど大切なものはないだろう、という話である。
Coldplayのように自身の音楽性を大きく変えていくことは、メンバー間における理解力、言い換えれば信頼力というものが最も試されるポイントだ。
Keaneの場合、そうした音楽性の変遷がほとんど発生しなかった分、作品を重ねるごとに楽曲の品質が向上していったことは、もはや自然の摂理とも形容すべき事象なのかもしれない。
ブレない姿勢というものは熟成という魅惑的な果実を誘発するのだろう。

事実、アルバムの1作目から4作目を順番に見渡した時、サウンドプロダクションの向上は言うまでもないが、楽曲におけるアレンジ能力のクオリティが着実にランクアップしているのがよく分かる。
具体的には1作目は「This Is The Last Time」、2作目は「A Bad Dream」、3作目は「Perfect Symmetry」、そして4作目は「Silenced By The Night」の計4曲を連続して試聴するだけで、彼らの成長が手に取るようにお分かり頂けることだろう。

元々はギターレス、またはピアノロックと揶揄されることが多かったKeaneだが、そうした奇異の視線を楽曲本来の品質でねじ伏せてきたところに彼らの凄みがあった。
何はともあれ、バンドに関わらず、音楽というものは楽曲が全てである。
歌が上手いとか、楽器が弾けるとか、それ以前に大前提として楽曲そのものに魅力がなければ大衆の心は躍らない。
演奏技術のお披露目が目当てなら、それこそロックにこだわることなく、テクニカル重視のフュージョンでもやればよろしい。

Keaneの場合、特別に歌が上手いわけでもなく、演奏技術にしても突出して目立った点は見当たらないが、極上のメロディセンスと王道的なアレンジによって、今や英国を代表する正統派ロックバンドの頂点に君臨すると言っても過言ではない。
それはこれまでに発表した4枚のオリジナルアルバム全てが全英1位を記録していること、これが何よりの証拠でもあるだろう。


有終の美を飾る珠玉のベストアルバム

前置きが長くなってしまったが、その活動休止宣言とともにアナウンスされたアルバムが、今回紹介する「Best of Keane」である。
その名の通り、彼らにとっても初のベストアルバムである。
諸事情あって手に入れるのが遅くなってしまったが、こうして2枚組の本作に接した時、やはり彼らの偉大なる音楽センスには脱帽である。
どの曲も容易に情景描写が出来てしまうような、甘く切ない美旋律の応酬に思わず笑みがこぼれてしまう。
もちろん、収録曲は過去作からの選曲であり、新鮮味は薄いのだが、こうしてKeaneの集大成を改めて味わえるのはベストアルバムの利点だろう。
相変わらずピアノ主体の楽器構成が耳に心地良く、終始安定感抜群の卓越したアレンジが良質のサウンドプロダクションで味わえる内容に仕上がっている。
もし万が一、Keaneを知らない方がいるとするならば、本作を最初に手に取るのも悪くない選択だと思う。
実際、過去4作からの代表曲が随所にちりばめられており、ファンにとってもそれほど文句の出ない選曲になっているからだ。

加えて3曲の新曲(「Higher Than The Sun」「Won’t Be Broken」「Russian Farmer's Song」)も収録されており、ファンにとっては必携の1枚と言えよう。
この新曲の出来も素晴らしく、4作目「Strangeland」に収録されてもおかしくないクオリティだったことは明記しておきたい。
特に終曲でもある「Russian Farmer's Song」はバンドがまだ円熟期にあることを自ら証明するに足りる内容であり、この曲を聴くとやはり活動休止という決断が悔やまれて仕方が無い。

おお、Keaneよ。
人気、実力ともに円熟した安定期に入った今、何故その活動を休止するというのか。

いや、見方を変えるとするならば、このベストアルバムを聴いて気付かされたことが1つだけある。
それは安定という名のマンネリズムの存在だ。
彼らのブレない音楽性についてはすでに前述した通りだが、細かく言えば初期のメランコリックな曲調にポジティブでヒロイックな世界観が加味されてきたのが3作目以降の特徴でもある。
広義のメロディアスロックという枠の中では些細な違いかもしれないが、根底は不変ながら枝葉はバンドの成長とともにその形を変えてきた。

しかし、王道であること、言い換えればKeaneとしての様式美を保持することに、一定の成果及び満足感というものがメンバーに浸透したのではないかと思う。
もちろん、その起点となったのは2012年発表の4作目「Strangeland」であろう。
繰り返すが、このアルバムは私の中でもKeaneの最高傑作であると、胸を張ってお勧め出来る名盤である。
邪推に過ぎないが、この「Strangeland」の成功が、結果的に今回の活動休止宣言へと誘うこととなってしまったのではないだろか。
仮にもしそうなら、これほど前向きでポジティブな活動休止宣言もないだろう。
新曲を聴く限り、少なくとも音楽性の相違によるメンバー間の対立が今回の原因ではないはずだ。

恐らく、近い将来、彼らは復活を果たすに違いない。
これはもう確信に近い。
つまり今回のベストアルバムは、Keane第1章の完結編という側面を持っているのだ。

ファンとしてはこの活動休止期間が次なる新生Keaneの新章へと続く短いインターバルだと信じたい。
それがたとえ数年後であろうと、ひたすらに座して待つ価値のあるバンド、それがKeaneである。
私もいつかまた彼らの新作を記事に出来ることを夢見ながら、当分はこのベストアルバムの余韻に浸りたいと思う。

ひとまず、Keaneの物語は、今ここに幕が下ろされた。




ザ・ベスト・オブ・キーン
キーン
ザ・ベスト・オブ・キーン
曲名リスト
1. エヴリバディーズ・チェンジング
2. サムウェア・オンリー・ウィー・ノウ
3. ベンド・アンド・ブレイク
4. ベッドシェイプド
5. ディス・イズ・ザ・ラスト・タイム
6. アトランティック
7. イズ・イット・エニー・ワンダー?
8. ナッシング・イン・マイ・ウェイ
9. ハンブルグ・ソング
10. クリスタル・ボール
11. ア・バッド・ドリーム
12. トライ・アゲイン
13. スパイラリング
14. パーフェクト・シンメトリー
15. マイ・シャドウ
16. サイレンスド・バイ・ザ・ナイト
17. ディスコネクテッド
18. ソブリン・ライト・カフェ
19. ハイヤー・ザン・ザ・サン
20. ウォント・ビー・ブロークン

1. スノウド・アンダー
2. ウォルナット・ツリー
3. フライ・トゥ・ミー
4. トゥ・ジ・エンド・オヴ・ジ・アース
5. ザ・ウェイ・ユー・ウォント・イット
6. サムシング・イン・ミー・ワズ・ダイイング
7. アルマンド
8. レット・イット・スライド
9. ヒー・ユースト・トゥ・ビー・ア・ラヴリー・ボーイ
10. シン・エアー
11. ザ・アイアン・シー (マジック・ショップ・ヴァージョン)
12. メイビー・アイ・キャン・チェンジ
13. タイム・トゥ・ゴー
14. ステアリング・アット・ザ・シーリング
15. ミス
16. ディフィカルト・チャイルド
17. シー・フォッグ (ライヴ・フロム・メキシコ・シティ、2012年8月)
18. ロシアン・ファーマーズ・ソング
19. サムウェア・オンリー・ウィー・ノウ (ライヴ:アマゾン・アーティスト・ラウンジ) (日本盤ボーナス・トラック)

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