ねおでっど日記

間違いなくたぶん、個人の主観です

ねおでっど的「この30年、この30枚」(HR/HM編)

BURRN! (バーン) 2014年 10月号

BURRN! 2014年10月号


はじめに

国産HR/HM専門誌、BURRN!が今月号で創刊30周年を迎えた。
私もこの雑誌とは中学生の頃からの付き合いであり、過去に自分の意見が読者の声として掲載されたり、懸賞応募でMetal ChurchのTシャツが当選するなど、愛読するYOUNG GUITAR誌と並んで今でも大変に思い入れの深い存在であることは否めない。
幼少期から活字中毒気味だった私にとって、音楽をここまで文学的且つ論理的に解説するこの雑誌の存在は、今なお驚異的であり、ネットに押され気味の出版業界にあっても、その希少価値はまだまだ高いとも感じている。
もちろん、内容や編集者の姿勢に関する賛否はあって当然の話だが、BURRN!という独自のスタイルを確立させている点はリスペクトに値するのではないだろうか。
継続は力なりと言えど、30年というのはあまりに長い年月である。

さて、前置きは早々に切り上げて本題に入るが、今号の誌面において「この30年、この30枚」という企画があった。
私自身これをとても面白く読ませてもらったのだが、自分のBlogでも思い出深い30枚のHR/HM系アルバムを列挙してみようか、というのが今回の記事の発端である。
完全に便乗記事になってしまうが、興味のある方はお付き合い願いたい。
ほぼ、HR/HM好きなら誰もが知っているような作品ばかりだが、もし知らない作品などあれば今からでもチェックをお勧めする。

以下、ABC順に、この30年間で私が愛聴してきた30枚である(画像クリックでAmazon)

ちなみに私が考える名盤とは8割以上の楽曲がヘビロテに値し、尚且つサウンドプロダクションのクオリティが一定以上のものを指すため、今回は泣く泣く除外したものも多い。(例:Metallica「...And Justice for All」、Sepultura「Arise」、Yngwie J. Malmsteen「Trilogy」など。)


Angra「Temple Of Shadows」

Temple of Shadows

2004年。Angra史上においても最高傑作の呼び声が高い5作目。音楽性はデビュー時から変わらないメロスピ&パワメタが中心だが、本作は十字軍の物語をベースにしたコンセプトアルバムというだけあって、アルバム全体の流れが秀逸であり、また各楽曲のポテンシャルも極めて高いという傑作中の傑作と言える作品だろう。特に「Angels And Demons」という楽曲の品質は特筆すべきもので、これはスピードに頼らずとも疾走感というグルーヴは実現可能であるという事実をメロスピの王者たるAngra自らが証明してみせたという点でも貴重な作品。ジャケットのデザインもセンス抜群、文句なしだ。


Annihilator「Live At Master Of Rock」

Live at Masters of Rock

2009年。カナダ産スラッシュメタルとして唯一無二の存在感を放つAnnihilatorのLive盤。ベスト盤的な選曲はもちろんのこと、バンドの演奏も充実した仕上がりとなっており、加えてLiveのわりには音質も良好であることから、新旧問わず世のスラッシャーには好意的に受け入れられると思われる。見所はもちろん中心人物であるJeff Watersのギターとなるが、ベテランとはいえ現在においても衰えを知らず、その実力は今でもMegadethのDave Scott Mustaineに匹敵することは言うまでもない。Annihilatorは日本での知名度の低さが気になるが、私としてはスラッシュ四天王にノミネートされても何ら不思議はないバンドと思っている。


Anthrax「State Of Euphoria」

State of Euphoria

1988年。80年代にアメリカで勃興したスラッシュメタルは私のギター人生においても特に重要な意味を持っているが、中でもAnthraxとMegadethの存在なくしてその本質は語れない。どちらも偉大なるリフメーカーの存在があり、Anthraxの4作目となる本作もScott Ianの魂あふれるバッキングが全編において炸裂。残念なことに、サウンドプロダクションが貧弱であることは否定出来ないものの、Metallicaの「...And Justice for All」よりは3倍マシな仕上がりなので安心してもらっていい。「Be All, End All」「Caught In A Mosh」は言うまでもないが、「Make Me Laugh」「Now It's Dark」「Misery Loves Company」など名曲揃いだ。その他、Anthrax作品では「Sound of White Noise」を今でもよく聴いているが、ギタリスト視点からすると本作の方がコピーの楽しさは上であり、私の中では名盤としての地位に一寸の揺らぎはない。


Blind Guardian「Somewhere far Beyond」

Somewhere Far Beyond

1992年。ジャーマンメタル特有の哀愁美旋律を武器に、J・R・R・トールキンなどの作品からインスパイアされた叙情性あふれる楽曲展開を持ち味とするBlind Guardianの4作目。本作はジャケットのアートワークからも想像出来るように、ファンタジーRPG的な世界観を実現。実際に「The Bard's Song」という曲では「ホビットの冒険」をモチーフにしており、今でこそ全世界的に有名なロードオブザリングだが、彼らの先見の明には恐れ入るばかりだ。中でも私は「Theatre of Pain」という曲が大のお気に入りで、もし自分がプロレスラーだったなら、きっとこの曲を入場テーマとして使用しただろう。アルバム全体としてはVocalの声量及び歌唱力が楽器隊の迫力に押され気味な部分も多々見受けられるが、それを差し引いたとしても素晴らしい内容である。


Disturbed「Indestructible」

Indestructible

2008年。90年代にグランジの侵攻を受け、人気及び実力ともにボロボロになってしまったHR/HMシーンにおいて、救世主的に登場したバンドがいくつか存在するのだが、Disturbedは間違いなくそのうちの1つに挙げられる。すでにデビュー作からオルタナティブ的な新世代メタルの形を提示してきた彼らだが、私はあえてこの4作目を推したい。というのも、これより過去の作品はサウンドプロダクションに少々難があり、特にギターの音質には納得がいかなかったからだ。加えて特徴的なギターソロの出番もなく、どちらかというとVocal至上主義のようなスタンスさえ感じていたほど。しかし、本作は音質、そして楽曲の品質ともに集大成的な色合いが濃く、ギターパートも納得の出来である。終盤にかけて少し息切れするが、オープニングから中盤にかけての流れは神懸かり的とも言え、これを早く体感しないことにはHR/HMシーン自体が次のステップに移行出来ないのではないかと思えるほどに、非常に素晴らしい内容。活動休止が惜しまれる。


Dream Theater「Images And Words」

イメージズ・アンド・ワーズ

1992年。もはや説明不要の屈指の名盤である本作は、プログレッシブメタルという新たなジャンルの羅針盤となったことでも有名だ。今も精力的に活動するDream Theater自身にとっても歴史的価値の高い作品であることには間違いなく、それは昨今のLiveのセットリストを見ても一目瞭然である。これはいかに本作のクオリティが高いかということを示す材料とも言えるが、逆に言えば以後リリースする作品が常に本作との比較対象となり続けてきたという歴史も無視出来ない。ここに「Dream Theaterの永遠のライバルはDream Theater自身である」という推論が成り立つのだが、それほど意義深い作品であることをここで改めて言及しておきたい。すなわち全曲捨て曲なし。HR/HM界のみならず、近代音楽史においても重要な作品の1つである。


Faith No More「King for a Day, Fool for a Lifetime」

King for a Day/Fool for Life

1995年。グランジブームの余韻が残る混沌とした時代に産み落とされたFaith No More渾身の5作目。彼らの代表作としてはこれより前の「Real Thing」や「Angel Dust」が有名であり、それらを推す声が多数であろうと推測されるが、私が最もよく聴いた作品はこの「King for a Day, Fool for a Lifetime」である。ミクスチャーという言葉がまだ新鮮だった時代に、ここまでジャンルレスな作風は今から考えても驚異的。一見するとストレートなHRのような形態だが、中身は思った以上に濃密であり、その後に登場するLimp BizkitやKornなどのラウド系アーティストにも多大な影響を与えた作品だと思う。独特なコード進行が癖になる逸品だ。


Gary Moore「Wild Frontier」

WILD FRONTIER

1987年。2011年に急逝したGary Mooreの「ハードロック期」における名作である。サウンドプロダクションに問題があるものの、全曲捨て曲なしの品質が素晴らしい。また、泣きのギターと呼ばれる手腕も如何なく発揮されており、名曲「The Loner」は当時のギターキッズならほぼ全員がコピーしたであろうと容易に推測される。本当に、本当に惜しい人を亡くしたものだ。近年はブルースに傾倒していたが、そろそろ本作のようなHR系の作品を発表するのではないかと噂されていただけに、ただただ残念でならない。改めて、最大の敬意をこめて。合掌。


Guns N' Roses「Use Your Illusion II」

Use Your Illusion 2

1991年。彼らについてはデビュー作の「Appetite for Destruction」を推す方が大勢いらっしゃると思うが、自分にとってのGuns N' Rosesの代表作は間違いなく本作である。それまで荒削り気味だったバッドボーイズ系HRの曲調とは確実に一線を画す内容であり、尚且つそれが当時の一般大衆に快く受け入れられたという点でも大変に意義のある作品と言えよう。青盤と呼ばれる本作はオープニングから7分を超える曲が登場し、それ以降、ほぼ捨て曲なしの展開が続く。特に「Estranged」は別格の存在であり、この楽曲1つで他の類似バンドとの決別が実現したと言っても過言ではない。SLASHによるサスティンの効いた伸びやかなギターソロと、粒立ち感のあるバッキングは多くのギターキッズにも影響を与えたことだろう。どこを切り取っても、彼らの黄金期である。


Judas Priest「Painkiller」

ペインキラー

1990年。HR/HM業界において、長年に渡ってリトマス紙的な役割を果たしてきた不朽の名作である。ヘヴィメタルという言葉が示す意味は、本作に全て内包されているが故に、一旦ネガティブに捉えてしまうとこのジャンルへのダイヴが当然に躊躇されるであろう。それほど、HR/HMというジャンルを明快に表現した作品である。もちろん、Vocalの声色に好き嫌いはあって当然なので、むしろ注目して欲しいのは楽曲の構成、展開である。アルバムタイトル曲「Painkiller」はもちろんのこと、「All Guns Blazing」「Night Crawler」など理路整然とした高品質な楽曲が立ち並び、その熱量たるや恐ろしいほどの気迫さえ漂ってくる作品だ。少なくとも、HR/HMファンにとってこの作品を否定する人は皆無。万が一、いたとすれば、それはこのジャンルに対する冒涜である。


KMFDM「Blitz」

Blitz

2003年。KMFDMのような活動期間の長いバンドの場合、どのアルバムを選出するかは非常に悩ましいところだが、どうやら本作は私が最もヘビロテした作品である。オープニングからオールドスクールなインダストリアル系モダンEBMが炸裂し、「Davai」「Strut」「Me & My Gun」などではKMFDMらしい、切れ味鋭いギターリフが縦横無尽に駆け抜けてゆく。この気迫たるや彼らにとっても久々の痛快さであり、それもそのはず、本作では元メンバーであるTim Skoldが久しぶりに参加しているのだ。Shotgun Messiahというバンド名に聞き覚えのある方ならご存知かと思うが、一般的な知名度で言えばMarilyn Mansonのプロデューサーを務めた人物である。Skold名義でも活動しているので興味が湧いたなら是非ともチェックをお勧めしたい。


Megadeth「Rust In Peace」

Rust in Peace

1990年。現在においてもMegadethにとっての最高傑作であり、スラッシュメタルを代表する名盤である。元はMetalicaに在籍していたDave Scott Mustaineが紆余曲折を経てクビとなり、彼らへの対抗心剥き出しで結成したのがこのMegadethであることは周知の通りだ。Metalicaを意識する余り、初期のMegadethには気負い過ぎた部分も多々見受けられたが、4作目となる本作でようやく落ち着きを取り戻し、自分達の個性(インテレクチュアル)に焦点を当てることで真っ直ぐと芯の通った骨太の作品に仕上がった。今や日本のお茶の間でもお馴染みのMartin "Marty" Adam Friedman在籍時の作品でもあり、アラビア音階を彷彿とさせる無国籍なギターソロが味わえる点でも大変に貴重と言えるだろう。ギター弾きの私にとってはJudas Priestの「Painkiller」よりも価値の高い作品と位置付けており、今なお年に10回以上は愛聴するメタル・スタンダートである。


Mors Principium Est「Liberation = Termination」

Liberation=Termination

2007年。フィンランド産のメロデス、Mors Principium Estによる3作目。この手のジャンルは没個性に陥るバンドが数多く見られるが、当初からポストモダンを標榜し、その実現に努力を惜しまなかった彼らの野心が本作で見事に開花した格好だ。怒濤の如く押し寄せるのはギターサウンドのみならず、随所で効果的にシンセサイザーが使われ、リズム系の打ち込みも率先して活用するなど、最後まで飽きさせない工夫が素晴らしい。痛快なことに、およそ40分ほどであっという間に完走してしまうアルバムだが、これを私はSlayerに対するオマージュとして好意的に受け止めている。道中、スクリーモやメタルコアといった側面も散見されるが、本質は美旋律にあり、とても聴きやすい。音質も悪くない。


Mr. Big「Lean Into It」

Lean Into It

1991年。Big In Japanの代表格、Mr. Bigの2作目である。現在も精力的に活動する彼らにとって、本作を最高傑作と呼ぶのは失礼かもしれないが、差し支えはないだろうと思う。1曲目から名曲のオンパレードであり、終盤まで安定感抜群の心地良いアメリカンHRが楽しめる作品としては、Bon JoviやVan Halenの名作と肩を並べるほどの出来とさえ言える。重要なのは楽曲そのものである、というバンドの決意をそのまま形にしたようなアルバムであり、当時のテクニカル至上主義のHR/HMシーンへ警鐘を鳴らした点についても評価に値する。2作目とはいえ、すでにベテランの風格すら漂わせていることに今でも驚かされる内容だ。


Nickelback「Dark Horse」

Dark Horse

2008年。カナダ産アメリカンロックの重鎮、Nickelbackによる6作目。BURRN!編集部の大野氏が「これはDef Lepardが作るべきだった」と評していたが、私も全くその通りだと思う。それもそのはず、プロデューサーにはRobert John "Mutt" Langeを迎えて製作されているのだ。彼はDef LeppardやAC/DCの作品を数多くプロデュースし、両者を世界的なHRバンドに育てた功労者の1人でもあり、その手腕は本作でも十二分に発揮されている。これまで私はNickelbackのVocalの声色が肌に合わず、やや敬遠してきたのだが、本作におけるヘヴィネスとメロディアスのバランスの良さに、そんな杞憂は一気に消し飛んでしまった。NickelbackがDef LepardやBon Joviと同列に語るべき存在となった記念碑的作品と見てもいいだろう。まさにDark Horseの登場だ。


Nightwish「Imaginaerum」

Imaginaerum

2011年。新生Nightwishによるコンセプチュアルな7作目。シンフォニックメタルというHR/HMのサブジャンルを自ら切り開いたバンドとしても有名だが、Vocal交代後の本作の前評判はファンにとっても疑心暗鬼の状況だったと言っても過言ではない。しかし蓋を開けてみれば、そこにはシンフォニックでオペラ的でありながらミュージカル系総天然色ファンタジーな要素がちりばめられた新生Nightwishの姿があった。先行でシングルカットされた「Storytime」だけを聴くと全くピンと来ないのだが、アルバム全体を通して聴くとこれが非常にスッキリしてくるから不思議なものだ。そこはまさにコンセプトアルバムの教科書ともいうべき作品である。特に「Slow, Love, Slow」〜「I Want My Tears Back」〜「Scaretale」への流れは近年まれにみるシネマティックな展開。思わず拍手だ。


Pantera「Vulgar Display Of Power」

Vulgar Display of Power

1992年。HR/HM好きでこのアルバムを知らない人はいない。一般の方でもジャケットデザインぐらいはご存知ではないだろうか?それもそのはず、その後のHR/HMシーンの流れを大きく変えたという意味でも非常に資料的価値の高い作品である。具体的な話になるが、1990年にMetallicaがブラックアルバムを発表した時、私はひどく落胆した覚えがある。それまでのスラッシュメタル的作風が大きく後退し、ギタリスト視点からも全く面白味のない曲調に成り下がっていたからだ。シンプルを突き詰めた結果だと思うが、皮肉にもそれが全米のみならず世界的にも大ヒットを記録し、我ながら自分の耳を疑ってしまったほどだ。しかしそれから2年後に発表されたこのPanteraの2作目は、私の鬱憤を見事に晴らしてくれた会心の一撃的作品となった。特に「Walk」という曲が持つ意味は大きい。真のヘヴィネスとはスピードに非ずという理論を立証した瞬間だった。そしてこの意志は後にSlipknotが引き継ぐこととなるが、それはまた別の機会に。


Queensryche「Operation: Mindcrime」

Operation: Mindcrime

1988年。シアトル出身のHR/HMバンド、Queensrycheの3作目。HR/HM界隈において、たった1枚のコンセプトアルバムを挙げるとすれば、本作以外に何があるというのだろうか。80年代のリリースにしてこのクオリティとは今から考えても驚異的の一言である。オープニングからエンディングまで、それはまるで本物の映画を観ているかのような、極めて流麗な流れを全編において堪能することが出来る作品だ。HR/HM系では前半で失速気味な作品が意外に多いのだが、この作品に限っては後半にかけてビルドアップしていくという好内容。見事に粒揃いの名曲がこの1枚に凝縮されており、改めてギタリストChris DeGarmoの存在に敬意を抱かざるを得ない。様式美の塊のような名盤である。


Rage「Trapped!」

Trapped!

1992年。ジャーマンメタルの雄、Rageによる6作目。彼らは1984年の結成から現在も活動する老舗バンドだ。とはいえ中心人物Peavy Wagner以外のメンバーは常に流動的であり、しかもトリオ編成ということを考えると、最近ではPeavyのソロプロジェクトのような印象さえ抱いてしまうのは仕方のないところだろう。本作を発表した頃はメンバーが固定してから3年は経過していたはずなので、内容もバンド的な塊感のある仕上がりで安心安定の出来だ。ジャーマンメタル特有の高速な疾走感が味わえる快作だが、私のお気に入りは「Baby, I'm Your Nightmare」。低速であるものの、この曲はRageならではの美しいコード進行が味わえるという点でもお勧めである。


Richie Sambora「Stranger In This Town」

Stranger in This Town

1991年。Bon Joviのギタリストとしても著名なRichie Samboraによるソロデビュー作だ。本作はBon Joviの歴史から見れば「New Jersey」と「Keep The Faith」の間に発表された作品ということになるが、中身はバラエティ豊かな曲調に彩られた大陸的AORが満載の秀作である。その頃はちょうど本体のBon Joviが解散危機を迎えていた時期でもあり、恐らくRichieは「本気」でこのソロアルバムを製作したと思われる。事実、その内容は素晴らしく、全曲シングルカットも夢ではないような、粒揃いの楽曲がコンパイルされている。ただ1つ、Bon Jovi用に作曲したかと思われる「Rosie」だけが浮いてしまっているのが残念だ。やはりこれはボーナストラックにしておくべきだった。その点以外は満点だろう。


Robby Valentine「The Magic Infinity」

マジック・インフィニティ

1993年。オランダの貴公子による2作目。彼のファンからすれば1作目を推す声が多数だと思うが、楽曲、音質ともに格段にクオリティが向上した本作は、HRファンのみならず、万人にお勧め出来る内容となっている。北欧メタルというよりもAORに近いメロハーといった趣きだが、「Only Your Love」や「Don't Make Me Wait Forever」の涙腺破壊力たるや凄まじく、加えて「Help Me Spell My Name」や「Raise Your Hands」そして「Valentine's Overture Part II (A Martian On Earth)」などに散見されるQueenへのオマージュを隠そうとしない素直な製作姿勢が非常に好感の持てる作品だ。未だ現役活動中ではあるが、間違いなく来世に語り継ぐべきアーティストの1人だろう。


Rob Moratti「Victory」

Victory

2011年。Final FrontierのVocalでもあるRob Morattiによるソロデビュー作。何を隠そう、本作はここ数年で私が最もヘビロテしている作品だ。どれくらい聴いているかと言えば、そのほとんどの歌詞を覚えてしまうぐらい聴いている。特に「Life Time」と「I Promise You」はHR/HM界隈に氾濫するパワーバラード系楽曲において、その頂点に君臨するのではないかと錯覚してしまうほど、素晴らしい名曲だと思う。これはWhitesnakeの「Here I Go Again」や「Now You're Gone」で育ってきた世代には思わずご理解を頂けるのではないだろうか。一言で言えばメロハーだが、北欧系ほどウェットではない分、季節を問わず愛聴出来る点も嬉しい。ゲスト参加しているWingerのReb BeachのギターもGood。雑味と嫌味のない真っ直ぐな作品。


Thunderhead「Killing With Style」

Killing With Style

1993年。ドイツ産でありながら硬質なアメリカンHRを武器とするThunderheadの4作目。良くも悪くも中心人物Ted Bulletの音楽性がThunderheadそのものであるため、この後にリリースされた5作目6作目はさすがにマンネリ感が漂ってしまっている。日本国内での知名度は前作「Crime Pays」からだと記憶しているが、私のお気に入りは本作の方だ。オープニングを飾る「Young And Useless」はThunderheadが何者であるかを端的に表しているので、ご存知ない方はこの曲だけでもチェックしてみて欲しい。本作は全体の流れも良く、「Movin' On」のようなパワーバラードを5曲目に配置しているのも非常に巧みで、それは後半の「Down In Desperation」にも同じことが言えるだろう。猪突猛進だけでは終わらないHRの美学がここにある。


Vicious Rumors「Welcome To The Ball」

ウェルカム・トゥ・ザ・ボール

1992年。正統派HM的でありながらパワーメタル風情の強固なリズム隊とツインギターの表情豊かな絡み具合が絶妙な本作。特に「You Only Live Twice」と「Raise Your Hands」における温度の高さは刮目に値する。当時としては最も素晴らしいサウンドプロデュースに数えられる1枚でもあり、今なお粒立ち感のあるザクザクとしたギターサウンドを味わえるのは大変に貴重だ。USA産HMの底力を見せたVicious Rumors4作目。This is Heavy Metal.


Viper「Theatre Of Fate」

シアター・オヴ・フェイト

1989年。ブラジル産メロスピ系の発火点となった傑作である。疾走するユニゾン系ツインギターリフはジャーマンメタルの模倣だが、安定感抜群のVocal、Andre Matosのおかげで欧州産のような荘厳な雰囲気を体現しているところが素晴らしい。彼は後にANGRAでも成功を収めることになるが、私としてはもう少しそのままViperに在籍していて欲しかったと思う。全曲が名曲だと思うが、中でも「Prelude To Oblivion」は別格だろう。ちなみに終曲「Moonlight」におけるバイオリンソロは、後のシンフォニックメタル誕生へのきっかけとなった楽曲と言えるのかもしれない。


Vow Wow「VIBe」

VIBe

1988年。Vow Wow名義としては5作目となる本作。Vow WowにはもっとHeavy Metal然とした傑作が他にも存在するが、私が愛聴してきたのはこの盤である。発売当時は売れ線を意識し、所謂アメリカナイズされた曲調に相当な批判があったものと推測されるが、落ち着いて本作と対峙してみるとその品質の高さは誰もが認めるところであろう。1曲目「Spellbound」から日本人離れした人見元基のVocalが冴え渡り、バンド全体の演奏も筋肉質で骨太な印象。そこに日本人好みな美旋律が配置され、私からしてみれば総じて好印象しか浮かばない作品と言える。「Helter Skelter」「Rock Me Now」「Turn On The Night」、特にこの3曲が当時のVow Wowの勢いを如実に証明していると思う。


White Lion「Mane Attraction」

Mane Attraction

1991年。典型的アメリカンHRの4作目。彼らについては2作目の「Pride」が名実ともに名盤認定されていると思うが、私のお気に入りは本作である。その内容は果たして、外観はポップでありながら要所要所でハードに攻め込むという、正統派HRの教科書的存在とも言うべき作品だ。これは後に登場するNickelbackのスタイルとも言えるが、すでにこの時代に完成されていた事実は見逃せない。まるで北欧メタルのような雰囲気の「Broken Heart」やプログレッシブ調の展開を見せる「Warsong」などがハイライト。メロハーとしても隠れた名作だと思う。


Whitesnake「Slip Of The Tongue」

Slip of the Tongue

1989年。Whitesnakeにとって8作目となる作品。なぜ「サーペンス・アルバス」の方ではないのか。もちろん今でもあの名作はよく聴いてるのだが、なぜか私はこちらの方を多くリピートしているのだ。恐らくギターの音質の好みもあろうかと思う。確かにJohn SykesのギターはDavid Coverdaleとも相性が良く、Whitesnake史上においても最高の組み合わせだろう。それは否定しない。しかしながら、本作を担当したSteve Vaiのクオリティも決して低くはないのだ。むしろ「Slide It In」あたりからアメリカナイズされていったWhitesnakeの音楽性に、一筋縄ではいかないSteve Vaiによる変質的な世界観が加わることによって、アメリカンHRの新しい姿が浮かび上がってくるから音楽とは不思議なものである。「Slip Of The Tongue」「Wings Of The Storm」「Slow Poke Music」などがその好例だろう。「サーペンス・アルバス」という大名作の後のリリースだったが故に、巷では厳しい意見の多かった本作だが、もう少し見直されても罰は当たらないのではないかと思う。


X「Blue Blood」

Blue Blood (Bonus CD) (Spec)

1989年。メジャーデビュー作にして日本のみならず世界に対しても大きな影響を与えた日本が誇るHM作品。序盤からブラストビートに近い高速なBPMが炸裂するものの、全体的には様式美あふれる美旋律が各所にちりばめられており、また「Endless Rain」などのパワーバラード系の楽曲も収録され、総じてとてもバランスの良い作品だ。この日本において、後にも先にもXのようなバンドは大変に貴重だと思うが、この作品の後に歌謡化していく彼らの歴史を考えると、やはり本作の意味、意義は非常に大きいものがある。私の場合、インディーズ期にリリースされた「Vanishing Vision」も思い出深いが、全曲リピート回数では圧倒的に「Blue Blood」の方が多い。恐らくバンドでコピーしていたことも関係しているだろうと思う。「Week End」は神。(特にSingle Version。)


Yngwie J. Malmsteen「Trial By Fire: Live In Leningrad」

トライアル・バイ・ファイアー:ライヴ・イン・レニングラード

1989年。今回のような企画でLive盤を選ぶのは少々反則のような気もしているのだが、演奏のパフォーマンスと選曲そして音質の良さから考えて、本作はYngwie作品で私が最もよく聴いたCDである。(DVD版の方が収録曲はもっと多いのだが、ギターヒーローとしての彼の魅力が凝縮されているという点ではCD版はとても「上手い」選曲である。)1つ重要なことはVocalがJoe Lynn Turnerであること。Rainbowの頃から好きだったVocal故に、本作への思い入れは強い。加えて、私がギターを弾く動機となった作品でもあり、そういう意味では生涯で最も影響を受けた作品とも言えるだろう。(小学生だった私に「Far Beyond The Sun」の刺激は強過ぎた!)この時期はYngwieにとっても円熟期、いや黄金期とも言え、もちろんLive盤は他にも発表されているのだが、本作のベストパフォーマンスの評価は揺るがない。


おわりに

駆け足で30枚を選出してみたが、この30年を振り返る意味でも楽しく記事を書かせてもらった。
今回はHR/HM系に絞って選んでいるが、その他RockやPunk、Club Muisc系はまたいつかの機会で記事に出来ればと思う。

改めて、創刊30周年のBUURN!誌を祝福すると同時に、今後も良質な読み物系雑誌であり続けることを祈って、ひとまずここで記事を終わりたい。

ご拝読に感謝。