Beyond The Black「Songs of Love and Death」★★★★★
Beyond The Blackは2014年に活動を開始したばかりの新人バンドだが、デビューアルバム「Songs of Love and Death」のクオリティが高すぎて、私の中で「Amarantheショック」の再来と位置付けているほどだ。
これは楽曲の品質はもちろんだが、Amaranthe同様、Vocalの魅力に尽きる。
例えばこのようなシンフォニックメタルの場合、ハイトーンでオペラ的な表現を得意とする女性Vocalがほとんどだと思うが、このバンドのJennifer Haben嬢はむしろ中低音から伸びのある美声が特徴的で、極めて自然に楽曲に溶け込んでいるのだ。
試しに本作のオープニングを飾る「In the Shadows」を聴けば、大抵のHR/HM好きは思わず身を乗り出すことになるだろう。
Beyond The Black - In The Shadows
まるで「ゲーム・オブ・スローンズ」のような雰囲気でありながら、シンフォニックにありがちな気恥ずかしさは微塵も感じさせない楽曲アレンジに脱帽である。
これにはドイツ出身ということもあると思うが、フィンランドのNightwishやオランダのEpica、オーストリアのEdenbridgeなど他のシンフォニックメタル勢とは確実に一線を画す世界観と言えるだろう。
スウェーデンのAmarantheほどポップではないにしても、コンパクトにまとめられた各楽曲を聴けば、シンフォニックメタル、いやヘヴィメタル初心者にとっても大変聴きやすいアルバムに仕上がっていることは確かだ。
だからといって内容が極端に薄いということもなく、特にジャーマンメタルなどメロディアスなHR/HMを好む層からは絶対的な信頼を勝ち取るのではないかと私は推測する。
例えば本作の中盤に収録されている「Hallelujah」だが、これはBlind GuardianやDark Moorのようなシンフォニック系のメロディクパワーメタルが好きな方にも自信をもってお勧め出来る。
このような管弦楽とメタルを融合させたシンフォニックメタルは、Nightwishの登場以降、雨後の筍のように各地で「量産」され、没個性が長らくシーンの課題となっていたように思う。
Beyond The Blackはそういった予定調和で新鮮味が薄れたシーンに、救世主の如く一筋の光明を与える存在となるような気がしてならない。
すでに今年は待望の2ndアルバム「Lost In Forever」も発表済みなので、今後さらにファン層が拡大していくことは容易に想像出来る。(2nd発表前にVocal以外のメンバーが総入れ替えしたにも関わらず、本国のチャートでは4位に食い込む健闘っぷり。)
Beyond The Black - Lost In Forever
ちなみに彼らのサポート役として、同郷のSascha Paeth(元Heavens Gate)がプロデューサーにクレジットされていることもメタルファンにとっては安心材料の1つになるだろう。
我が国でもぜひ日本盤がリリースされ、HR/HM界隈の話題となって欲しいバンドである。
特にJenniferのコケティッシュな魅力はもっと多くの方に知ってもらいたいと思う。
I love you, Jennifer!
Beyond The Black - Love Me Forever (Live at WACKEN 2014)