ねおでっど日記

間違いなくたぶん、個人の主観です

【考察】宮崎アニメは死生観で作られている

本日はこの記事。

映画を未見の方にはネタバレになってしまうので閲覧注意かもしれません。

要はジブリ関連によくあるネタで、一見すると都市伝説的な内容とも言えます。

昔、トトロの都市伝説を聞いた時は根拠のない憶測ばかりで呆れてしまった記憶がありますが、このポニョについては僕も釈然としないまま時を経ておりまして、今回の考察は既出の内容とはいえ、改めて読むとなかなか興味深いところです。

この作品の主人公であるポニョの本名はブリュンヒルデといいます。ブリュンヒルデというのは、北欧神話に出て来るワルキューレ(ヴァルキリー)の1人です。ワルキューレは戦さで勝敗を左右し、戦死した者をオーディンの神殿(ヴァルハラ)に連れていく役割を担っています。

例えば上記のような理由から、ポニョの話は死後の世界であるという推論が成り立っているわけですが、確かにこれは本編を観たことがある人なら納得せざるを得ないものです。

本編自体、それまでのジブリ作品と違って掴みどころのないストーリー展開でしたからね。

しかしながら、僕はこう思うのです。

そもそも、宮崎アニメは死生観に基づいて作られている、と。

例えば、過去の有名作品で考察してみましょう。

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ご存知、ナウシカの舞台は産業文明崩壊後の荒廃した地球です。

腐海に覆われた森では猛毒によりマスクの着用が必須となっております。

原作ではトルメキア軍と土鬼軍の軍事衝突が主に描かれ、常に死と隣り合わせというディストピアな作風が印象的。

宮崎駿の長編アニメの原点にして、彼の死生観が全編にちりばめられた作品と言えます。

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Twitterでもお馴染み、「バルス」で有名な冒険活劇長編アニメ。

終盤では敵役ムスカによる無慈悲な大量虐殺も。

「見ろ!人がゴミのようだ!」

空中都市が舞台なので実感が湧きにくいのですが、何とも鬼畜な所業です。

パズーとシータの死をも覚悟した「バルス」詠唱シーンは語り継がれる名場面ですね。

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「生きろ」というキャッチフレーズが印象的な作品。

冒頭、主人公であるアシタカは呪いを解くため、生まれ育った村を離れます。

このとき、すでに彼は死を覚悟しており、周りの村人も皆それを悟っています。

村を出る際、許嫁であったと思われるカヤという女性に守り刀を渡されますが、その時2人はこれが最期の別れになると分かっていたはず。

この絶望的なオープニングからして、宮崎駿の死生観があふれていますね。

つまり「生きろ」というフレーズには、死を通して生を実感する、という意味にも聞こえます。

宮崎アニメにおいて、最もメッセージ性の強い作品だと思います。

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迷い込んだトンネルの先は黄泉の国?だったお話。

この現実世界から異世界への導入がシームレスでお見事。

また、様々な伏線が回収されて元の現実世界に戻るラストも素晴らしいですね。

こうした現実世界の収束はファンタジー映画の基本原則でもあり、ポニョとは一線を画します。

加えて、この迷い込んだ世界を死後の世界とするならば、やはり死生観とは切っても切り離せない関係となります。

特に象徴的なのはカオナシと電車に乗って銭婆の家に向かうシーン。

他の乗客は表情さえ分からないシルエットの姿で描かれ、ここが生者の世界であることを明確に否定していますね。

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それではここで改めて考えます。

死生観とは一体何でしょうか。

辞書によれば「生きることと死ぬことについて、判断や行為の基盤となる考え方。生と死に対する見方。」とあります。

言い換えれば、死ぬことを理解した上での生き方、ということになるでしょうか。

宮崎アニメは幾多の作品で生の素晴らしさを説く反面、強烈な死のイメージも同時に送っています。

それはつまり、死というフィルターを通さない限り、生きるという行為に実感が伴わないからだと思います。

ここは非常に重要な論点でして、かの大友克洋と違って、宮崎駿がアニメにこだわり続ける理由も恐らくそこにあるのではないかと思います。

要するに、生身の人間ではないアニメキャラクターに生を吹き込むこと、それは作品の世界観に死という現実を織り込むことで初めて可能になるのではないか、という推論です。

ジブリスタジオのアニメーション技術力の高さはもちろんですが、こうした死生観のリアリズムが物語のプロセスを経て構築されているところに、宮崎アニメの本質的な強さがあるのではないでしょうか。

そう考えると、老若男女、世代を超えて幅広く支持されているのも納得であります。

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話を戻します。

確かに、冒頭のポニョについては賛否両論の評価があります。

(巷ではむしろネガティブな感想の方が多いような気もします。)

しかし、これを死後の世界が舞台と考えれば、意味不明だった数々のシーンも見方が変わってきますよね。

ただ、これがあくまでも観客の受け止め方次第ということになると、最終的には製作者の言葉が聞きたいところですが、幸運にも当時の宮崎駿のインタビュー記事を見つけましたので引用します。

9歳のときに読んだ『人魚姫』での最後、人魚姫が魂がないから泡になってしまうのは納得できなかった。あのキリスト教的な考え方はいまだに許せない気がしている。異種婚礼譚は西洋だけでなく、日本にもある。日本人は、そういう愛を自然に受け入れる精神的な伝統をもっている。それで今回はハッピーエンドにしようと思った。しかし、これがハッピーエンドかどうかは見る人によって違うと思う。

(中略)

ポニョがポニョを貫き、宗介が宗介を貫く。みんな良かったねというところへ、最終的には向かいました。また海と陸は、この世とあの世とか生と死とか、いろんな言い方ができるが、五歳の子どもが分かってくれればいい。アニメーションとしての生き物のような水の表現まで、作っていて実に楽しかった。その楽しさが伝わってくれれば嬉しいです。

宮崎監督、やはりこの作品でも死生観を意識して作ってますね。

ただ、子供向けに作ってある分、理屈や物語のプロセスはあまり考えていないと。

そうなってくると大人がこれ以上深読みするのも馬鹿馬鹿しくなってくるのですが、、、ひとまずポニョの舞台は死後の世界論、これはこれで恐らく間違いないと僕は結論付けておきます。

なぜなら、死後の世界だからこそ、ポニョというキャラクターが愛らしく躍動しているようにも見えるからです。

果たして、この都市伝説、皆さんはいかがでしょうか。

そして、宮崎監督の次回作も大変気になるところです。

以上。

死を考える100冊の本

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