Chicane「The Sum of Its Parts」★★★☆☆
Chicaneにとっては6作目(幻の「Easy to Assemble」を含めると7作目)となるオリジナルアルバム。
前作「Thousand Mile Stare」では昨今のEDM系楽曲を強く意識した側面も見受けられたが、本作でもその路線に変更はなく、Chicaneとして上手くトレンドを取り込んでいるようにも見える。
しかし、「One More Time」や「Motion」のような単調なシンセの刻み方は退屈そのものであり、これは本人がイビザ在住なら仕方のないことかもしれないが、EDM的な時流に乗ろうとしたものの、いまいち「乗り切れていない感」が漂ってしまっているのは非常に残念である。
むしろ「Église」や「Tuesdays」「Orleans」など、およそクラブ向きではないチルアウト系楽曲の存在が頼もしく、余計なお世話かもしれないが、今後のアルバム製作については、出来ればホームリスニングに特化した内容でお願いしたいぐらいだ。
古い音源で言えば「Offshore」「No Ordinary Morning」「Come Tomorrow」「Locking Down」、近作では「So Far Out To Sea」など、元々がチルアウト系ヨーロピアンポップスの帝王として認知されるべきアーティストである。
本作では終曲の「Photograph」がその役目を担っているが、どうにもフロア仕様の楽曲群に押され、Chicane本来の良さが埋没してしまっているように感じてしまった。
もちろん、オープニングからエンディングまで、1990年代〜2000年代初頭のバレアリックなサウンド志向に大きな変更はなく、一見すると旧来のChicaneファンには嬉しい内容と言えるのかもしれないが、どことなく漂う違和感や妙な居心地の悪さは否定出来ず、これが漠然とした物足りなさに直結しているような気がする。
私は「Giants」(2010年)がバランス的にも最も優れているアルバムではないかと信じて疑わないが、悲しいかな、本作はChicaneの歴史にとって重要な1ページとは言い難い内容となってしまった。
Back to Basics, Chicane!
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