BT「Electronic Opus」★★★★★
近代のエレクトロニックミュージック史において、必ずや名前の挙がるアーティストの1人、BTことBrian Wayne Transeau。
もはや説明不要だと思うが、その多彩な音楽性故に、Electronic Dance Musicの発展にも多大な貢献を果たしてきた開拓者でもある。
本人は自身のことを「ダンスミュージックアーティストではない」と否定しているが、結果的にトランスブームに湧いた時代ではDJ TOP 100に毎年ランクインしていたほど、DJとしての認知度も抜群である。
また、彼の発言を裏付けるかのように、映画やゲーム音楽の制作も活発であり、近年では「ワイルドスピード」や「ステルス」のサウンドトラックを担当し、ゲームでは「バーンアウト」や「ニードフォースピード」などに楽曲提供をしている。
果たして、彼のジャンルを定義するのは難しい。
確かに、1990年代後半〜2000年代初頭にかけてはトランス界隈のTiestoやPaul Van DykとコラボしてRemixなども連発していたが、彼のオリジナルアルバムはそれこそジャンルレスで多種多様な音楽要素に満ちているのだ。
特に1997年に発表された「ESCM」はBTの音楽性が見事に開花した名盤であり、ここに収録されている「Flaming June」は現在でも色褪せぬ名曲中の名曲である。
例えばZeddがクラシック音楽をルーツとしているのに対し、BTもベクトルの方向性としては同じである。
しかし、BTの場合は4つ打ち系ダンスミュージックに留まらず、ブレイクビーツやヒップホップ、ジャズやロックの手法も取り入れながら、エレクトロニカやアンビエントまで自身の音楽性を投影していく特徴がある。
こうした実験的な試みを常に絶やさないクリエイティブな姿勢が、彼の評価を底上げしているという事実を忘れてはならない。
さて、1995年の1stアルバムを皮切りに、これまでに9作のアルバムを世に輩出してきたBT。
10作目、そしてこの2015年という節目において、アーティスト人生の集大成とも言える作品がこの「Electronic Opus」である。
恐らくこれは、長年暖めてきた企画だと思うが、本作はこれまでの楽曲をオーケストラアレンジでリメイクしたコンセプチュアルなベストアルバムである。
何しろ「Flaming June」が1曲目からして、その気合いの入り方は尋常ではない。
重ねて申し上げるが、元々がクラシック音楽をルーツとするアーティストである。
それがこのオーケストラを多用したアレンジとは、聴く前から傑作を保証されたようなもの。
それを証拠に「Dreaming」「Love Comes Again」「Suddenly」「Skylarking」などは原曲を遥かに超えるかのような屈指の出来となっており、いやはや、この熱気と熱量は凄まじい。
およそ26年のキャリアを持つBTだが、今なおその創作意欲に衰えはなく、むしろ年々モチベーションが上がっているのではないかと思えるほど、素晴らしい作品である。
(ちなみに本作は現時点でDL販売のみ。未だにCD未発売なのが悔やまれる。)
ぜひとも、このLiveを日本でも体感したいものだ。
それも音響設備の良い、コンサートホールでぜひ。
そしてこのアルバムをきっかけに、日本でもBTファンが増えてくれることを祈りたい。
BT's Electronic Opus - Live - YouTube