I See Stars「Treehouse」★★★★★
USA出身、エレクトロコアと評されるI See Starsが5作目を発表。
それまでの6人体制から4人というシンプルなバンド編成となり、ファンには一抹の不安を抱かせたようだが、どうぞ安心してもらいたい。
お待たせしました。
I See Starsとして、最高傑作の登場である。
もちろん、前作「New Demons」(2013年発表)においてもエモやポップへの歩み寄りは散見されたが、本作はメンバー全員が真正面からチャートミュージックに立ち向かおうとした姿勢がオープニングから繰り広げられており、この変貌、いや進化にファンならずとも驚かずにはいられない。
まずは試しにPV曲にもなった「Running with Scissors」をチェックしてみて欲しい。
I See Stars - Running With Scissors (Official Music Video)
このシネマティック感、明らかに前作とはベクトルが異なる内容である。
I See Starsに限らず、これはメタルコアやポストハードコアに属する「駆け出し」のバンドに多いのだが、自らのアレンジ能力の稚拙さを補うため、ヘヴィなギターリフやVocalのグロウルで楽曲のクオリティを誤摩化す場合がある。
こうしたヘヴィでコアな部分に傾倒すると、どうしても曲調がワンパターン化するため、I See Starsのようにエレクトロ要素を取り入れたりするバンドが異様に増えてきたのがここ数年の流れ。(日本ではNew BreedやFear, and Loathing in Las Vegasが好例である。)
そのようなヘヴィな骨格をもつバンドが、サビにおける美旋律なクリーンパートの出来にこだわりはじめ、事実、Killswitch Engageなどはその方向性で着実にファン層を拡大していった経緯がある。
そして、件のI See Starsもその戦略を取り入れた。
2009年にデビューアルバムを発表したI See Starsは、そこから7年という時を経て、ようやく最終形態、つまりヘヴィネスとメロディアスが絶妙に交錯した21世紀型のポストハードコアな音楽性を手に入れたようだ。
稚拙な表現だが、このアルバム、全曲が哀愁美旋律全開で素晴らしい。
アルバムの前半では控えめだったエレクトリック要素が、中盤以降からは水を得た魚のように躍動し、終盤に向かってビルドアップしていく構成も相当に賢明な判断である。
恐らくこれは4人のプロデューサーによる手腕もあるだろう。
しかしながら、2005年のバンド結成から10年を経て、I See Starsが蓄積した経験値によってようやく最終形態へと進化したのは誰の目から見ても明らかだ。
それは「Light in the Cave」「Mobbin' Out」「Walking on Gravestones」「All In」「Yellow King」など、後半に配置された楽曲を聴けば一目瞭然である。
加えて、バンドの演奏力及びVocalの歌唱力の向上がしっかりと目撃出来たことも嬉しい。
サウンドプロダクションも良好である。
これは例えば、、、Blessed By A Broken Heart亡き今、I See Starsがその穴を埋める存在となっても何ら不思議ではないと思う。
まさに、シン・I See Starsの誕生である。