V.A.「AFTR:HRS Mixed by Tiesto」★★★★☆
突然ですが、TiestoがDeep House系のレーベルを立ち上げたのを覚えていますか?
ちょうど昨年の春頃になりますが、AFTR:HRSというサブレーベルを発足させてます。
Tiestoと言えば、昔のファンならTrance系、今のファンならBigroom系、といった豪快なイメージを持たれている方が多いと思いますが、実は彼、昔っからHouse大好き人間だったりするんですよね。
それはこれまでのオリジナル曲やMIX CD収録曲にも反映されています。
これらは総じて古い曲なのでBPMは速いのですが、骨格はHouse Musicそのものであると言えます。
そしてこのような地味な楽曲でも、僕がTiestoらしいと思うのは、微かに漂う哀愁感。
やはりオランダという欧州出身らしく、メロディへのこだわりは相当なものです。
今から3年前に発表したColdplayのDeep House Remixも圧巻のクオリティでしたよね。
前置きが長くなりましたが、嬉しいことに、TiestoはこうしたDeep Houseへの追求をやめたわけではなかったようです。
というのも、2016年12月にAFTR:HRSレーベルから初のコンピCDが発表されておりまして、完全に出遅れてしまいましたが、今宵はそのMIXを紹介したいと思います。
まずは主な収録曲を試聴してみましょう。
いかがでしょうか、この陶酔的な世界観。
僕なんて思わず「優勝!」と叫びそうになりました。
特に昔からのTiestoファンの胸には突き刺さりまくる内容かと思います。
というのも、雰囲気としては「In Search of Sunrise」シリーズのDisc1的な、つまり昔から彼が実践していたHouse Musicの進化形とも言うべき内容だからです。
これはTiesto自身がアフターアワーズ*1を意識した音源を選んでいることも影響しています。
他の収録曲を聴いてもらえるとお分かりかと思いますが、Tropical House的な音色が出てきたり、Future Houseっぽい趣向のアレンジもあったり、そこは程よく時代性を反映した構成となっているのも特徴的。
ただ1つだけ不満点を挙げるとすれば、DJ MIXに少しだけキレがありません。
全盛期、と言っては失礼になりますが、Tiestoが本気を出せばもっと艶やかな流れのMixになっていたと思います。
(とはいえ、AFTR:HRSレーベルの音源が中心という制約のある中で制作されているので、そこは仕方ないかもです。)
僕自身、彼のこうしたDeep House路線は大歓迎です。
もはやTranceをやってもらうより嬉しいかもしれません。
これは僕がDeep Tranceを提唱していることもありますが、静的な美しさっていうのがClub Musicにもあるんですね。
要するに、奥行きのある世界観。
それをDJ MIXで表現していくわけですが、そこでは必ずしも技術が感性を上回るとは限らないっていう世界です。
だからこそDJは面白くて、やり甲斐のある趣味だったりします。
ということで、Tiesto流の極上Deep House、一聴の価値ありでございます。
(特に昔からのファンは必ずチェックしてください。)
Tiesto自身、DJの現場では未だにBigroom系メインのようですが、本作のようなDeep Houseを思いっきりプレイしてくれる日が来ることを、心の底から願っています。
Tiesto, Let's get back to the basics!!
*1:クラブ営業が終わった後に開催される朝方~昼頃までのパーティー