The 1975「A Brief Inquiry Into Online Relationships」★★★☆☆
彼らにとって2年ぶりとなる3rdアルバム「ネット上の人間関係についての簡単な調査」(邦題)ですが、もう皆さんチェックされましたでしょうか?
僕も発売日から聴き始めて、ようやく落ち着いた感想が書けそうなので、少しまとめておきたいと思います。
(一応前置きしておきますが、完全に僕の主観ですのでその旨ご理解ください。)
当ブログで、彼らのデビューアルバムを絶賛したのがもう5年前。
MVで初めて彼らのことを知ったのが2012年頃でした。
特に「Sex」には衝撃を受けまして、その歌詞も含めて太鼓判を押すほど気に入った経緯があります。
その後、2ndアルバム「I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It」がアメリカのチャートでも1位を獲りまして、名実ともにワールドワイドなバンドに急成長したところは記憶に新しいところでございます。
(しかしこのアルバム、A&Rマン泣かせの長いタイトルが印象的でした。)

君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。
- アーティスト: THE 1975
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: CD
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ただ、そうした周囲の盛況っぷりに反比例するかのように、バンドの主役であるMatty Healy(Vo&G)は心身のバランスを崩し、ドラッグに溺れていきます。
特に昨今はインターネット全盛の時代ですから、ちょっとした批判も直に耳に入るでしょうし、情報というノイズの中で、次第に自我を見失い、虚像と現実に疲弊していく姿はわりと想像に難くありません。
この辺はまさにポップ・スターの宿命とも言うべき負の側面ですが、果たしてこれも通過儀礼の1つに過ぎないのかもしれませんね。
さて、ヘロイン中毒に陥ったMatty Healyは6週間に及ぶ集中治療を行い、退院後はUKに戻り、そこから半年以上かけて製作されたのが本作「A Brief Inquiry Into Online Relationships」ということになります。
前置きが長くなりましたが、それでは本作の感想に移りましょう。

- アーティスト: THE 1975,マシュー・ヒーリー,ジョージ・ダニエル,ロス・マクドナルド,アダム・ハン
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2018/11/30
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簡潔に申し上げますと、本作は退屈で質の高い作品です。
まず、何が退屈かという点について。
これは前作「I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It」を踏襲しているスタイルということもありますが、そもそもがデビューアルバムにあったようなバンドとしての勢い、良い意味での青臭さ及び初期衝動が完全に失われているんですね。
全体を通して、極めてパーソナルなバラード系の楽曲が目立ちますし、これでライブとなりますと完全に"お通夜状態"になるのでは?と心配するほど。
(全15曲中、半分ぐらいがバラード系楽曲です。)
もっと言えば、Electronica的なアプローチを本作でも果敢に取り組んでいるのが気になって仕方がありません。
もちろんこれは、アルバムとしてのコンセプトを貫くために必要な措置とはいえ、ElectronicaやIDM系ってそもそもが1音1音を非常に大切にするジャンルなんです。
音の1つ1つに細胞を息づかせるような、極めて繊細なアレンジを必要とするのですが、その辺にどうにも熱意が感じられないというか、実を言うと僕は前作の内容もそうしたアプローチがあまり好きではありませんでした。
(「Please Be Naked」や「「I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It」といった楽曲の存在。必要ですかこれ?っていう。)
コンセプチュアルでシネマティックな構成を狙ったのは理解しますが、もっとタイトな曲数にすればブレることなくピントが合ったのに、とは今でも思います。
(前作の収録曲数は17曲。正直、詰め込み過ぎでした。)
反面、楽曲や演奏、そしてサウンドプロダクションは確実に向上しています。
特にMatty Healyの成長は著しく、Liveになると不安のあったファルセットも安定しつつあって、心身ともに健康であることが本作からも窺えました。
音楽性は前作の延長線上にありますから、先述したようにバラード系が目立ちますが、ミディアムテンポのポップ・ナンバーになると完全に彼らの独壇場。
「It's Not Living (If It's Not With You) 」や「Love It If We Made It」などは職人芸の領域でして、他の追随を許さないクオリティです。
こうした80年代をルーツとしたポップやファンク的な要素と、マンチェスター由来のUK Rockのウェット成分が上手く融合して、ラウンジ・ミュージック及びライブハウス的な居心地の良さは相変わらずです。
果たして、特に前作が好きだった方には間違いなくオススメしますね。
これについてはもう、異論ありません。
しかしながら、初期の頃の粗削りなソリッド感はほんとんど消えてしまい、僕としては本当に寂しい作品となりました。
The 1975がポップ・ロックという実体であるなら、もう少しロックして欲しいじゃないですか。
これじゃあどこかのアイドル・バンドみたいで僕は悲しいです。
あぁ、初期の名曲「The City」における緊張感と多幸感のバランスの良さよ。。。
The 1975に関しては、リーダーのMatty Healyの精神状態が色濃く反映されるバンドですので、本作のベクトルについては確かに仕方ないとは思います。
(病み上がりで製作した経緯はすでに述べた通りで、本作の歌詞にも如実に反映されています。)
それでも彼らに期待してしまうのは、やはりUK Rockらしいカッティング・エッジなんですよね。
もっと日本語的に言うと、カウンター的な鋭さです。
この「Sincerity Is Scary」にしても、非常に完成度の高いポップ・ソングでありながら、バンドとしての緊張感が全く感じられません。
それを良い意味で捉えるか、それとも僕のように退屈と捉えるか、人それぞれだとは思います。
結局、音楽なんてものは好きか嫌いかの2択です。
他人が絶賛しているからといって、自分が気に入るかどうかの保証はありません。
従いまして、The 1975好きもそうでない方も、1度は本作を試聴して頂き、このバンドの良さを感じて頂ければ幸いです。
決して駄作ではありませんし、むしろ傑作の部類として評価される作品でしょうから。
しつこいですが最後に一言だけ。
Matty Healy、大人になるのが早過ぎるよ!

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