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DJ/イベントプロデューサー、NEODEAD公式レビューブログ

EXPERIENCE

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EXPERIENCE

 

冬山が好きだ。

人も少ないし、虫もいない。

空気は澄んでいて、雪が降ると撮影も楽しい。

 

ちなみに僕の登山は基本的に朝駆け。

専ら、日の出写真を撮るために、山頂を目指す。

 

冬は登山口を5時に出発してもギリギリ間に合う。

例えばこれが夏だと、3時頃には登り始めないとダメ。

山頂に辿り着く前に、日が昇ってしまうからだ。

 

もちろん、夜中の登山道は真っ暗で誰もいない。

時折、草むらで物音がするけど、恐らく小動物の類いだろう。

たまに後ろから足音がするけど、それもまた、気のせいだろうか。

 

むしろ、僕が苦手なのは風鳴り。

風は遠くの方から近づいて、唸り声を上げながら吹き抜けていく。

ざわめき、という言葉通りに不気味な存在である。

 

そうした自然の悪戯に畏怖しながら、懐中電灯1つで道を照らし歩く。

途中、ふと立ち止まり、おもむろに懐中電灯を消してみる。

そうすると、自分の周囲が驚くほど静寂していることに気付く。

 

夏と違って、虫の音すらしない。

見上げれば、満天の星空。

少しずつ、暗闇に目が慣れてきて、次第に山の稜線も見えてくる。

気温は氷点下だけど、風がなければそれほど寒くはない。

 

僕はこの、冬の静寂が気に入っている。

 

しかし、こうした体験は実際に経験してみないと分からない。

本稿で僕が伝えたい冬山の魅力も、恐らくほとんど伝わっていないだろう。

だから、何事も経験に勝るものはないと思う。

 

スマホ全盛の今、情報は簡単に、そして大量に仕入れることが出来る。

目に飛び込んでくる写真や映像は高画質化しているし、音響機器も日進月歩。

仮想現実とやらを体現するVR技術の進化も凄い。

あたかも自分で体験したような錯覚さえ覚えてしまう。

 

けれども、視覚や聴覚だけの体験では、恐らく現実には勝てない。

実際に漂う空気の質感や匂いは、自らがその場で体験して初めて分かることだ。

 

急に狭い話になるけど、音楽についても、クラブで聴くのと、家で聴くのとは違う。

これはフェスにも同じことが言える。

小さなライブハウスで聴くのとは、明らかに異なるエクスペリエンスがそこにある。

 

DJを始めて20年が経つけど、今でも現場が最も大切な場所だと思う。

これを知っている人は、DJのみならず、歳を取ってもクラブやフェスに足を運んでいる。

きっと、そこでしか得られない何かがあると確信しているから。

 

従って、クラブやライブハウス、フェスといった現場に、定年という思想はない。

むしろ、刺激に慣れてしまった大人こそ、率先して現場に行くべきだと思っている。

僕も含めて、実体験をないがしろにして物事は語れないのだ。

 

話を戻そう。

 

今回の写真は、2015年2月14日の朝駆けで撮影したもの。

木立の登山道に朝陽が降り注ぎ、とても綺麗だった。

 

改めて写真で見ると、まるで格子(Lattice)のよう。

そして、雪を踏みしめる靴音だけの静寂を、微かに思い出す。

 

冬山は、僕の好きな現場の1つだ。