人は自動的に、歳を取る。
そしてある程度の歳を重ねていくと、何となく経験値が蓄積したような気がして、ついつい遠慮がなくなるものだ。
もちろん、経験値という知見を相手に伝えることはとても意義のあることなんだけど、年下の人間と接する際は、いろいろと僕も気を遣う。
無駄に先輩風を拭かせたくないし、偉そうにも思われたくないから。
そもそも、僕はシーンから引退しているわけでもないし、生涯現役として、常に当事者でありたいと思っている。
だからなるべく、彼らと同じ視点に立って考えようと努力しているつもりだ。
例えばクラブシーンでは、DJキャリアが20年を超えてくると、立派な中堅組と言えるだろう。
ベテランと呼ばれるには、あと10年ぐらいは経験を積まないと無理だけど、若手に対して意見を言えるぐらいの立場にはなる。
それこそ、自動的に。
僕も加齢とともに若手と接する機会が増えてきた。
そんな時は、いかに彼らのモチベーションを上げられるかっていうことを大前提にして話をしている。
根底にあるのは、危機感だと思う。
シーンに対して、常に危機感を持つことはとても大事なことで、それを若手と共有することはもっと大事なことだと僕は考える。
例えば、僕がイベントをプロデュースする時に意識するのは「点と線」だ。
DJをブッキングするにしても、各DJという点と点を、しっかりと線で繋ぐことが出来るかどうか。
これはイベントのコンセプトについても同じで、その世界観含めて、演者とお客さんという点と点の関係性を、一筋の線で結べるかどうかがポイントになる。
また、僕がDJ MIXについての指導をする時に、念仏のように唱えていることは「このMIXであなたは何を伝えたいのか」ということ。
これはイベントも同じで、結局何をやりたいのか目的がはっきりしないと、文化的価値さえ薄れてしまうような気がする。
ただ騒ぐだけなら、誰かの家に集まるだけで事足りるのである。
楽曲製作と同様に、イベントプロデュースもトライ&エラーの繰り返しだ。
むしろ、エラーの数だけ強くなれる世界とも言える。
若手より自慢出来ることがあるとすれば、中堅組に属する僕らしく、その膨大なエラーの多さにあるのかもしれない。
しかしこれは笑い事ではなく、イベントの主催者は常に経済的な問題を抱えている場合が多い。
音楽カルチャーの発展に貢献しようとして、海外のDJをブッキングしても、お客さんが入らなければすぐに赤字になってしまう厳しい世界だ。
ビジネスである以上、当然の話だけれども、その赤字が続くことで、モチベーションが維持出来ずに、イベントオーガナイズを辞めてしまった人はたくさんいる。
だからこそ、日本でクラブシーンを盛り上げようと頑張っている人に対しては、常にエールを送りたいし、応援し続けたいと思う。
僕に出来ることはとても限られているけれど、会えば必ずモチベーションが上がるような話をしたいし、褒めるところはとことん褒めたいし、告知や宣伝含め、とにかく出来る限りのバックアップはしていきたい。
ということで、今回の写真は「自動で」動くエスカレーターを選んでみた。
特に、オチはない。
ちなみに、写真撮影のモチベーションの源泉は、被写体とカメラ(及びレンズ)にあると思う。
不定期で撮影会を開催しているが、僕自身、とても楽しくて勉強にもなっている。
集まってくれている仲間には、感謝しかない。
いつも、ありがとう。