Hybrid「Light Of The Fearless」★★★★★
僕みたいな古いTranceファンにとって、Hybridの存在は別格です。
なぜなら、Tranceという新しいジャンルが産声を上げた1990年代後期に「Finished Symphony」という大名曲を発表したからです。
Tranceファンにとって、この曲はRobert Milesの「Children」に匹敵します。
後に、Deadmau5がRemixしたことでも有名ですよね。
まさに、時代を象徴する楽曲でした。
そもそも、初期のTrance系楽曲の特徴として、Classicとの親和性が挙げられます。
その名の通り、クラシック音楽のことですが、Tranceは今よりもずっと荘厳で様式美あふれる音楽性を持っていました。
この「Finished Symphony」がそうであったように、Hybridはジャンルの道筋を示したアーティストでもありました。
(その流れを忠実に受け継いだのが、Above & Beyondとも言えるでしょう。)
さて、Hybridとしての近年の活動は、主に映画のサウンドトラックなどが主流となっておりました。
正直、活動しているだけでもありがたいのですが、とかく映画の劇伴というものは、映像や台詞の後ろに控える存在でもあり、音楽的な目新しさは少なかったように思います。

Driveclub Original Game Soundtrack (Remixes)
- アーティスト: Hybrid
- 出版社/メーカー: Sony Interactive Entertainment
- 発売日: 2016/07/22
- メディア: MP3 ダウンロード
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ところが、今回は8年ぶりとなるオリジナルなフルアルバムです。(2018年発表)
その蓋を開けてみれば、全く初期と変わらない品質の高さに、思わず僕も唸ってしまいました。
こんな重厚な世界観をエレクトリックなサウンドで表現するとは、、、語彙力なさすぎですが、、、驚異的過ぎます。
騙されたと思って、まずは新曲を試聴してみてください。
えっ?これがTrance?という疑問を持たれる方もいると思います。
ややこしい話ですが、元々、Tranceという言葉は状態を示しており、その世界観や雰囲気を含めて、広義にTrance Musicと形容していた経緯があります。
従って、本作も現代のTrance Musicとは似て非なるものに聴こえてしまうかもしれません。
しかし、Hybridが紛れもないTranceサウンドであることに異論はなく、正直なところ、21世紀のElectronic Dance Musicが到達した、1つのゴール地点でもあると僕は思っています。
さて、本作は徹頭徹尾、コンセプチュアルな作風となっており、試聴の1曲だけで満足するには気が早いです。
ぜひ、オープニングからエンディングまでを聴いてみて欲しいですね。
そのエモーショナルでシネマティックな世界観に、古いTranceファンは恐らく全員、感涙することでしょう。
特に終盤にかけて、往年のHybridらしい展開の楽曲も増えますので、ぜひそこは確認をお願いします。
(終曲の「I Won't Back Down」は全方向に突き抜けています。凄絶の極みです。)
いずれにしても、本作「Light Of The Fearless」によって、最新のHybridが最強のHybridであることを証明してしまいました。
メンバーチェンジなどの紆余曲折を経ても、今なお第一線ということです。
パーティーサウンドなEDMが全盛の今、こうしたプログレッシブ志向な音楽にもスポットが当たって欲しいと切に願っています。
(余談ですが、同期的存在でもあるFaithlessも再びシーンに戻ってきて欲しいですね。)