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【書評】2019年10月の読書記録まとめ【15冊】

毎月末日に、読んだ本を備忘録としてまとめておこうと思います。

今月は長らく積んでいた本をはじめ、旧態依然のiPadを新調したこともあり、電子書籍にまで迂闊に手を出してしまいました。

(読書に関する取り組みについては、以下の日記にも書いたところです。)

とりあえず、毎月10冊のノルマを自分に課しています。

いずれは20冊程度が目標ですが、1日は24時間しかありません。

何かを得ようとすれば、何かを失うわけで、この辺は取捨選択の難しさを痛感します。

それでも量より質の方向で、基本的には好奇心を満たすことが最優先。

(積み本が多すぎるのでまずはそこから崩していく予定。)

では、10月になってから、読んだ順にまとめてみます。

もし興味が湧いたものがあれば、ぜひ手に取ってみてください。

(以下、あくまでも個人の感想です。ネタバレ部分はテキストを薄くしています。)

「知の体力」

理系の先生による知性の指南書。
その滑らかな文章と語彙の選り抜きが心地良い。
果たして、文系、理系と線引きする事自体が知性の放棄なのかもしれない。
学びはいつだって平等に享受することが出来、そのアクセルになるのが本書である。

 

「スラッシュ/ハードコア/スピード・メタル ディスク・ガイド (BURRN!叢書)」

スラッシュメタルに特化したディスクガイド。
このジャンルも誕生から40年前後が経過しているため、名作や傑作を書物としてまとめる意義はあると思う。
しかし、BUURN!誌の特別編集を謳うなら、いつもの得点表示があっても良かったのかもしれない。
そうなれば賛否両論になると思うが、それがBUURN!的評論のスタート地点でもある。
従って本書は評論本ではなく、あくまでもガイド本。

 

「プロフェッショナルワークショップ Lightroom [Classic CC対応版]」

写真編集ソフト「Lightroom」の解説書。
とはいえ、記載されている内容は基礎的なものばかり。
参考書というよりは、豪華な取扱説明書みたいだ。
この価格ならプリセットデータの付録があっても良さそうだが、そういったおまけの類いはない。
他方、安易にプリセットに頼る風潮もどうかと思っている。
「Lightroom」を初めて触る人には勧めたい。

 

「七回死んだ男」

SFトリックを描く難しさを証明した作品。
作者はSF新本格作品と胸を張るが、本格と名乗るには終盤の性急な展開はややドタバタした印象が残る。

そもそも主人公がループする設定は、密室劇であるが故にコントのような展開になりがちであるし、実際のところ、殺人事件に接した非日常的な緊迫感はあまり伝わって来なかった。その分、”家族劇場”として昼ドラ的に楽しめるというのは、果たしてそれが作者の狙いだったのかもしれない。

ただ、軽妙な語り口とは裏腹に、外面では”爺むさい”主人公が、あれほど狼狽するほどのトリックだったのかどうか、そして友理さんの伏兵どころか主役級の働きに、もしかしてこの人もループする体質ではないのかと疑ってしまう始末。

後日談がこれまたコメディ的で、オチに至るコンテクストに釈然としない僕などは蛇足に感じて仕方なかった。

とはいえ、反復世界や平行世界といったSF的世界観をミステリとして昇華させた功績は大きく、これが作者の代表作となっているのも頷ける内容。

ミステリ好きには、一読の価値あり。

 

「山口組 顧問弁護士」

40年間に渡る極道観察を経て書かれた内容のわりには、肝心の部分で描写が甘く、消化不良感は否めない。

希望的観測で言えば、今後の続編を意識したプロローグ的な書籍ではないだろうか。

山口組と言えば、まずは山一抗争の話になるのは分かるが、初見の人間にとっては分かりにくく、せめて主要人物を相関図などで説明するなど、もう少し親切な試みがあっても良かったかもしれない。

また、著者本人が最も親しかった極道として宅見組長の名前を挙げているが、あの射殺事件に関する記述がほとんどなく、この点は非常に残念。

(この件については、2018年に中野会会長がいきさつを書籍にして発表。世間を驚かせたことは記憶にも新しい。)

得てして、ヤクザジャーナリズムはヤクザエンターテインメントでもあり、本書のように堅気の人間が反社会的組織の内幕を語るのは非常に興味深いところである。

従って、著者による「本編」に期待したい。

 

「夢をかなえるゾウ」

著者 : 水野敬也
ミズノオフィス
発売日 : 2007-08-11
自己啓発本へのアンチテーゼとして機能する自己啓発本。

ガネーシャを関西弁のおっさんに設定したことが勝利。
元々インドでは庶民的な神様なので違和感はない。
むしろコントみたいな掛け合いには引き込まれた。

啓発的に言えば、人として良い習慣を並べているだけだが、偉人のエピソードをちりばめているので、妙な説得力がある。

この手の本は好んで読まないものの、すでに実践していることが多かったので、そろそろ僕にも成功が訪れてもいいのだが。

 

「無人島に生きる十六人」

著者 : 須川邦彦
オリオンブックス
発売日 : 2013-11-22
船乗り16人の「中高年漂流記」実話系ドキュメント。

著者の脚色によって読みやすくなっているが、果たしてそこに悲壮感の類いはない。

これには明治期の日本人が、というより船乗り特有の規律正しい集団行動及び統率力に優れた船長の言動、行動に集約されている。

運も味方に付けて、無事に本土への生還を果たしたからこその漂流記であるが故に、もう少し各登場人物の心象風景を覗いてみたかった。

全体的にボリューム不足は否めない。
でも、これが「腹八分」ということか。

 

「おとなの小論文教室。」

タイトルからして小論文の実用書かと思いきや、著者によるエッセイのような構成が終盤まで続き、何とも肩透かし。

書き下ろしではないため、前後の文脈も掴みづらく、およそ文体も疑問符が多用されて読みにくい上、非常に疲れる。

著者が仰るように、批判するのは簡単だし、小論文の動機付けとして参考になる部分はもちろんあった。

けれども、あくまでも本書は糸井氏の言う「実用のふりをした読み物」であって、すでに自己表現を文章で試みている人にはあまりお勧め出来ない。

ここまでタイトルと中身が剥離している書籍も珍しい。

 

「こころのヨーガ」

著者 : 赤根彰子
アノニマスタジオ
発売日 : 2008-10-01
内容はヨガ哲学が中心で、ヨガ必携の書「インテグラル・ヨーガ」の超簡易版といったところ。

すでにそういった知識を実践している人には向かない。
従って本書はヨガ初心者向け。

そういう意味では少々ボリューム不足ではないだろうか。
著者の体験談をもっと読ませて欲しかった。

 

「強運 ピンチをチャンスに変える実践法」

全編に渡って元谷節が炸裂する自伝的書籍。

氏のポジティブ思考もさることながら、耐震偽造の風評被害を不動産バブルの売り抜けで起死回生とした部分は、まさしく運を引き寄せた(強運の)証左だろうと思う。

成功者の読み物としては淡泊だが、実直で好感が持てる。

そして社長自身が広告塔を自負する以上、この本も賛否両論あって然るべきかと思う。

余談になるが、地方のアパホテルはまだまだ元谷イズムが浸透していないように感じることが多い。
昨夜宿泊したフロントには笑顔さえなかった。
そこは最低限、頑張って欲しい。

 

「三体」

著者 : 劉慈欣
早川書房
発売日 : 2019-07-04
SF小説は映画に比べると映像や音楽が直感的でない分、想像力に訴える言葉の表現力が最も重視されると思う。
そういう意味では、原作者はもちろん、今般の翻訳品質はとても素晴らしい。
基礎科学や物理学など、専門的知識を必要とする場面でさえ、まるで日本人作家による作品のように平易で読みやすかった。

問題は、この物語は3部作であり、第1部となる本作が異様に長いプロローグであるという点だ。
随所において説明的過ぎるとまでは言わないが、地球外生命体が登場してからの終盤は非常にテンポが悪いように感じてしまった。

従って、本作のピークは葉文潔の行動が明らかになっていく中盤であり、このカタルシスはミステリ小説のそれに近い。
また、VRゲーム「三体」の描写も面白く、その発想は機知に富んでいた。

総じて作者の知性と感性が研ぎ澄まされた作品であることに疑いはなく、果たしてその点を冗長とするか、それとも物語の背景として好意的に受け取めるのか、読者によっては意見が分かれるだろう。

 

「鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋」

劇作家、そしてコラムニストである鴻上尚史氏による人生相談本。
これはネットでの人気連載「ほがらか人生相談」を書籍化したものなので、すでに何度か目にした人もいるだろう。

鴻上氏の回答については、それが正解かどうかということはさておき、1つの考え方の提示の仕方がとても論理的かつ説得力があり、大変参考になる。

加えて、相談者の問いも身近な問題を提議しているものが多く、これは決して他人事ではないというリアリティ。

同調圧力といった旬な話題についても、鴻上氏は機知に富んだ的確な指摘をしているので、この辺はぜひ多くの方に読んでもらいたいと思う。

そういう意味では、今回の書籍化の意義は大きい。

 

「夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神」

前作に比べてやや失速気味な展開。
これはガネーシャの出番を減らしたことが原因だろう。

差し詰め、架空の芸人による、架空の自伝を読んでいると思えば、各所における詰めの甘さは気にならないはず。
自己啓発本と期待して読むのはあまりお勧めしない。

 

「最高のハウスメーカー&工務店の選び方2019: 全国322社の特徴と評判を一挙公開」

一戸建てを検討している方、もしくは興味のある方向けの入門書。

経験談や口コミの信憑性は不明だが、総じて公平な視点で各ハウスメーカーを整理、分類しているところは好印象。

個人的には前半の耐震性や気密性についての記述が面白く、この辺は災害が頻発する我が国ならではといったところ。

その他、地盤やインテリアなどのサイトもアドレス付で紹介されており、全体を通して親切な設計。

果たして、これを読んで家を建てたくなるかどうかは微妙なところだが。

 

「正しく怖がる感染症」

感染症に関する基礎的な知見が詰まった新書。
ウイルスの歴史、症状、そして感染経路など、各章の構成がスッキリしていて大変読みやすい。

取り上げているウイルスも、デング、マラリア、エボラ、結核、コレラなど、代表的なものに絞って感染症の危険性を幅広く啓蒙している。

思うに、観光立国を目指している日本は、感染大国としての自覚を持たねばならない。
来る東京五輪についても、果たしてジカ熱や梅毒への対策が十分なのかどうか、個人レベルでも考えていきたい。
 

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