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【書評】2019年11月の読書記録まとめ【16冊】

さて、月末になりましたので、今月の読書記録をまとめておきます。

まだまだ未読な積み本が多い状況ですが、先月から週イチで図書館にも通うようになり、芋づる式に読みたい本がどんどん増えています。

この図書館というのは昔から好きな場所の1つでして、圧倒的な物量を誇る書庫の前に、無学な自分は成す術もなく立ち尽くすばかりなのであります。

特段大袈裟な話でもなく、公立の図書館なんて一生かかっても読み尽くせない本の量ですからね。

少なくとも、この空間に少しでも身を置くことで、井の中の蛙としての自分が、まるで相対化されていくような奇妙な心地良さを覚えるのですが、皆さんはいかがでしょうか。

それでは前回同様、短文の感想とともに、読了した本をご紹介します。

「外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~」

帯にもあるように思考のための行動術がてんこ盛り。
様々な引用から著者の言葉が裏付けされ、一見してそれが正解のようにも思えてしまうところは流石の文章力。

コンサルに限らず、何かを生み出す1つの方法論として非常に面白い内容。
そしてその行動術も具体的で多岐に渡っている。

惜しむらくは情報量が多過ぎる点。
同じ内容が頻繁に出てきたような気がする。

果たしてその辺りに「問い」を持てれば、本書の目的は半ば達成されたと言ってもいいのではないだろうか。
 

「面白くてためになる!日本のしきたり」

一般的な日本の習慣や風習をまとめた一冊。
1つのしきたりの背景にある歴史や文化を紐解いているが、至極簡易的。

例えば、盆踊りの起源として空也の念仏踊りを取り上げているが、ではその空也とは何者かについての記述はない。
日本の文化に言及するのであれば、神話や民間伝承をもう少し掘り下げて欲しかった。

そう考えると、本書はガイドブック的でもあり、もしかするとインバウンド向けなのかもしれない。
 

「体脂肪を落とす・締まったカラダをつくる 効く筋トレ・効かない筋トレ」

ビギナー向けの筋トレ指南書。

効かない筋トレを悪いフォームとして参照しており、ジムのマシンなどを使い慣れていない人にはありがたい内容。
また、メニューの参考例も具体的であり、好印象。

しかしながら、書いている内容は某筋トレ雑誌と大差なく、最も大事な食事についての言及が少なかったのが残念。

あくまでも、これから筋トレを独学で始めようとしている方向け。

 

「食人宴席―抹殺された中国現代史」

すでに絶版となっているため、図書館にて拝読。

文革という中国史上まれにみる「集団的無意識の狂乱」を子細に描写しており、これは著者の地道なフィールドワークの賜物であろうと思う。

前半から中盤まで、広西自治区の武宣県を中心とした食人の実態が描かれており、正直、その狂乱ぶりには言葉を失ってしまった。

終盤では、こうした中国史の背景にある孔子の儒学やマルクス主義の功罪を著者の視点で語られており、これが本書の説得力となっている模様。

個人的には、そういった著者の見解は蛇足気味に感じてしまったところで、純粋なルポタージュとしては情緒的にも見える。

加えて、文革以前の中国やロシアにおけるスターリンの粛清など、もう少し史実への具体的な言及や解説があっても良かったかもしれない。

とはいえ、中国、特に漢民族の社会を理解するのに避けては通れない一冊であることに間違いはなく、騒乱極める香港情勢の昨今、本書が示唆する共産主義とは一体何なのか、一読の価値はあるだろう。

 

「売れ続ける理由~一回のお客を一生の顧客にする非常識な経営法」

宮城県にある地元密着型のスーパー「さいち」の社長による経営指南書。

とは言っても、堅苦しい経営哲学の話ではなく、「商い」の基本原則をご自身の経験に基づいて言及されており、その構成はまるでエッセイのようで読み易い。

このスーパーに関しては、過去にも何度かTVでも放送されており、こちらも顔と名前は存じ上げていたが、その内情たる細かい部分まで知ることが出来たのは収穫だった。

飛行機で数時間はかかる距離だが、社長や専務が「現役」の間に、ぜひとも訪問してみたいと思う。

 

「溝鼠(ドブネズミ)」

主要登場人物が全員悪人という設定は映画でもよく見るパターンだが、必ずしもその設定が成功するかと言えばそうでもない。
この場合、実質的に悪人を相対化出来ないため、執筆にはリスクを伴う手法だと思う。
そこにあえて踏み込んできた著者の意気込みを、まずは評価したい。

さて、本書の魅力の1つでもある、徹底的なエログロ表現については、ディティールを重視して読者に嫌悪感を抱かせる一方、構図としては悪人が悪人を懲罰する側面でもあり、妙なカタルシスを感じてしまったのも事実。
この辺は「NTR」など、嫉妬を愛と感じる方などにとっては非常に分かりやすい心的描写が展開されている。

また、随所における比喩表現についても、著者の独特なセンスを感じずにはいられない。
例えば「田舎役場の職員の慰安旅行の記念撮影時のように、顔を強張らせた。」という一節だが、何度読み返してもイメージが湧かなかった。

それでも全体的なプロットは筋が通っているし、暴力エンタメとしてはシネマティックな展開が終盤まで続き、退屈はしない。

個人的に残念だったのは、登場人物の誰一人にも感情移入出来なかった点だ。
終始、覗き穴を見ているような気分でもあり、或いはそれが本書における著者の狙いだったのかもしれない。

蛇足になるが、小説だと筒井康隆、映画だとタランティーノなど、理不尽な暴力や凄惨な拷問描写に慣れている方にとっては、若干の食い足りなさが残ると思う。
反面、そういった耐性を持っていない人については、取扱に注意が必要と思われる。

いずれにしても、エンタメとして咀嚼するのが本書の本懐であり、そのうち続編も読んでみたいと思った次第。

 

「令和元年7月改訂 外国人・留学生を雇い使う前に読む本」

急増する外国人労働者を雇用する際の注意点が幅広く網羅された労務管理の実用書。

例えば、外国人技能実習制度については、すでに企業側が「技能実習責任者講習」にて知見を得ている場合が多く、本書の内容とは重複する可能性がある。

従って、そういった制度を利用せずに、外国人を直接雇用する法人や自営業者にとっての基礎的な参考書、といった立ち位置である。

個人的に不満だったのは、社会保障協定についての記述が一切なかったことだ。
これは脱退一時金の話ともリンクしてくるものだが、グローバルなビジネス交流において今後のトピックになっていくことに間違いはなく、本書でも概要ぐらいは説明すべきだったと思う。

外国人雇用に的を絞った実用書であるが故に、そうした専門的かつ学術的な記述はあえて避けたのかもしれないが、協定を結んだ各国の年金制度など、社会保障制度を世界的な視点から眺められるチャンスだっただけに、読み物としては非常に惜しい。

 

「悲憤」

著者 : 中野太郎
講談社
発売日 : 2018-12-12
喧嘩太郎こと、中野会会長の独白本。
となると、話題の中心は自ずと宅見若頭射殺事件である。

そこに至る経緯はネタバレになるので控えるが、中野太郎氏にとっては生涯における悲憤の発端であったことには違いない。

本人が高齢にして堅気になった今、肩の荷を下ろすかのように赤裸々に語っているところが、特に印象深かった。

また、随所において「侠はケンカが命」と説き、ヤクザはケンカで名を売るものと断じるその姿に、当代の山口組及び極道に身を浸す人間は果たしてどのように受け止めているのだろうか。

金に目が眩んだヤクザを金狂道と切って捨てたところに、任侠世代の意地とプライドを感じた次第。

 

「リラックスのレッスン~緊張しない・あがらないために」

演出家の鴻上尚史氏によるワークショップ的な本書。
リラックスというテーマに的を絞っているため、最後までその説明にブレはなく、読後はまるで「講座」を受けたような気分にもなれる。

冒頭でリラックスの重要性を説くことはもちろん、そこに至る様々な方法論は実に実践的であり、それらが鴻上氏の人生経験から導き出されていることもあって、甚だ説得力のある内容に仕上がっている。

具体例として、結婚式のスピーチや会社内でのプレゼンを取り上げているが、その他の場面にも大いに活用出来ることは言うまでもない。

それも適度な情報量として、すぐに読み終えることが出来るのも好印象。
実用書としては、パーフェクトではないだろうか。

 

「騎馬民族は来た!?来ない?!」

日本国家の起源について、騎馬民族征服王朝説を唱える江上波夫氏と、農耕民族一貫説の佐原真氏による対談本。

日本人のルーツを探る中で、こうした考古学的な見識はもちろん必要不可欠であり、その筋の著名な学者同士が真っ向勝負でディベートしたという構図が非常に面白く、これまでありそうでなかった「歴史の読み物」と言える。

歴史本となると、読む前にある程度の知見が必要かと思いきや、各ページの下段に用語解説が詳しく掲載されているので、学生時代に社会の授業が苦手だった方にも安心である。

それにしても、「文化」をつくったのが農耕民族、「文明」をつくったのが騎馬民族、という論拠を基に繰り広げる江上波夫氏の、狂信的なまでの自説への自信が特に印象に残る。

佐原真氏による冷静沈着で的を得た指摘にも何ら臆することなく、終盤まで彼の持論は全く揺らぐことがない。

そうした極めて学者肌である両氏の自信とそこに至るまでの葛藤が垣間見れるところに、本書の意義があると思う。

 

「マンガでわかる! 障害年金」

ついつい見落とされがちな障害年金の請求に関するQ&Aを漫画仕立てにまとめたもの。

うつ病など、精神障害に焦点を当てた内容は現代の世相を反映していると言えなくもない。
果然、本書によって希望がもたらされるケースもあるだろうし、性善説に立った解説は本当に困っている人への一助となり得るに違いない。

他方、社労士による監修を経た本であるが故に、社労士業務がこうした障害年金請求にも活路を見出さなければならない、苦難の時代に突入していることも暗に示唆している。

 

「クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン」

NHK番組「COOL JAPAN」から得た見識をまとめた一冊。
著者自身が司会を務めている番組のため、甚だ説得力のある内容に仕上がっている。

主に海外の文化や風習を紹介しながら、日本の異質さにも斬り込んでくるあたり、自己の相対化と客観視の重要性が本書の根底にあるテーマと言えよう。

また、政府の「クールジャパン」事業についても著者なりの論拠が明示されており、2015年の初版とはいえ、2019年の今でも、リアルタイム感覚で読み進めることが出来たのは収穫だった。

個人的には、長年の疑問が氷解したこともあり、本書への評価は高い。(西洋人がなぜ生まれたばかりの子供を別室に寝かせるのか、という問題について。)

総じて、日本が凄いというだけの自画自賛本に終わらなかったところに、本書の価値があると思う。

 

「「Jポップ」は死んだ」

「Jポップは死んだ 」という挑戦的なタイトルだが、補足すると「Jポップという産業複合体(構造)は死んだ 」ということを念頭に書かれた評論本である。

特にインターネットが起こした社会構造の変化について、音楽という側面から各方面を取材し、著者として一定の結論に辿り着いているところは痛快だ。

終盤、広げた風呂敷が上手く収納されていない感はあるものの、音楽文化の歴史と現状が程よく炙り出されており、読み物としては十分楽しむことが出来た。

観念的にディストピア論に陥りがちな話題を、終始ポジティブに捉えていたのは著者自身が音楽を愛し、楽器演奏もする表現者であったことが影響しているのではないだろうか。

他方、DAWやDJといったデジタルな方面まで詳しく言及されていることもあり、個人的にはクラブなどのナイトタイムエコノミーについても、この機会に掘り下げてみて欲しかった。

冒頭からライブハウスの話が出ていただけに、フェスやクラブの話を終盤で活かせれば、本としての起承転結が機能したのではないかと思う。

 

「中国D級グルメの旅」

考古学を研究する著者が中国滞在時の食レポをまとめた一冊。

D級グルメというタイトルに魅かれて手に取ってみたが、よく見るとDeluxeという言葉が付いてある。

要するにこれは中国料理に対する賛辞を込めているわけだが、登場するのは庶民的な家庭料理が多く、中国の食文化に以前から関心を持っていた自分などは、興味深く拝読した次第。

学者肌の食レポ故に、インスタ映えとは真逆な「記録的食卓写真」の数々には閉口してしまうものの、日記のように詳細に語られる記述は民俗学のフィールドワークにも近く、相応の臨場感がある。(日中友好のために覚悟を決めて臭豆腐を食べるシーンなど。)

個人的には「食人宴席」や「騎馬民族は来た!?来ない?!」を読んだ後だったこともあり、中国大陸の地域性や少数民族の特色について、さらに理解を深めることが出来たのは収穫だった。

 

「秘島図鑑」

著者 : 清水浩史
河出書房新社
発売日 : 2015-07-25
日本の領土に属する幾多の島々において、絶海の孤島的存在を秘島と称し、それぞれの歴史的背景などをまとめた一冊。

各秘島の解説については、インターネット上の情報量に及ばないものの、カラー写真とともに体系的に構成されているあたりに、書籍としての意味があると思う。

それでも、後半の秘島実践編は個人ブログの域を出ない日記調の文章が退屈に展開されており、やや蛇足気味。

秘島の趣旨からは外れてしまうかもしれないが、少数しか住んでいない小さな島々を、民俗学的な観点からまとめた「完全版」の刊行に期待したい。

 

「ギター・マガジン 2019年 11月号 (特集:J-POP歌姫編)」

かつてのJポップ系の音楽シーンについて、当時のプロギタリストへフォーカスした各種インタビュー記事が素晴らしい。

ELTの伊藤一朗やDAIの大渡亮、そして織田哲郎にパッパラー河合、、、挙句の果てにはSpeedのプロデューサー、伊秩弘将や小室ファミリーの松尾和博まで登場し、企画としては大変賑やかな誌面となっている。

また、ギターはもちろんエフェクターなどの使用機材まで写真付きで網羅しているところは、ギター専門誌の面目躍如たる部分でもあり、当時を知るギターキッズなら、幾ばくかの好奇心は必ずや満たされることになるだろう。

その他、掲載されているギタースコアの内容も興味深く、改めて往年のJポップを聴くきっかけにもなり得ると思う。

 

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