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【書評】2019年12月の読書記録まとめ【9冊】

さて、12月の読書記録をまとめておきます。

今月は体調を崩してしまい、読書量も減ってしまいました。

健康に関する本も読まなきゃいけない年頃、、、ってところでしょうか。

それでは簡単な感想を添えて、以下に並べます。

 

 

「上品な人、下品な人」

ビジネスコンサルタントという肩書を持つ著者らしく、定型的で四角四面なマナーの問題をエッセイのようにまとめた本。

果たして、著者の言い分は悉く正鵠を突いているものの、他人への厳し過ぎる視点は著しく寛容性を欠いており、相対的に「品のないエッセイ」になってしまっているのは確信犯なのだろうか。

ここまで他人の行動や言動に憎悪を持って目くじらを立てるのは、人間観察の負の側面でもあり、願わくばこの方と接見する機会が訪れないことを望むばかりである。

巻末で著者が記しているように「上品とは自分の欲を抑えることである」ならば、他者への思いやりと想像力をもう少し養ってから論じるべきではないだろうか。
 

「宮崎アニメの暗号」

宮崎駿のアニメ作品において、メタファーとなる部分を抽出しながら、著者独自の視点から考察した評論本。

例えば、考古学は推論の後に物証となる史実と照らし合わせて自論を形成していくのに対し、本書は著者の推論のみで構成されている分、説得力にはどうしても欠けてしまう。

著者がいくら断定的に論じても、肝心の作者である宮崎監督が否定したらそこで試合終了なのだ。

何とも砂上の楼閣のような評論本ではあるものの、陰陽五行思想や世界各地の神話との繋がりはさもありなんといったところ。

また、宮崎アニメの頂点と著者が讃える「もののけ姫」についても、アニミズムといった土着的な宗教観まで詳しく言及していたのは印象的だった。

個人的には「ジブリ映画のメタファー」という北海道教育大学の角教授による論文の方が文章も読み易く、面白かった。(2019年現在、ネットからも閲覧可能。)

 

「大分の民俗」

大分県の祭りや風習、生活習慣及び農耕民具などを民俗学的観点からまとめた資料集。

昭和63年~平成2年当時の朝日新聞に連載していた記事を集めているため、時系列としては体系的ではないものの、これほどの情報量は地道なフィールドワークの賜物であろう。

特に、同じ県内でも地域によって風習や祭祀の文化が大きく異なる点など、全編に渡って貴重な知見が詰まっている。

 

「宮崎駿の雑想ノート」

著者 : 宮崎駿
大日本絵画
発売日 : 1997-07-01
宮崎駿によるイラストエッセイ的な短編漫画集。
主な題材は軍事関係の船舶、航空機、戦車等。

その独特なタッチで描かれる漫画もさることながら、確かな知見に裏打ちされた各話の構成が細部まで行き届き、ファンにはたまらない一冊。

個人的には巻末のインタビュー記事が1992年当時のものだったので、そこはかとなく大変興味深く拝見した次第。

宮崎駿曰く「兵器ってのは一番にリアリズムで作るはずなのに、やっぱりその民族の持ってる幼児性が表れるんですよ。」という言葉に唸らされる。

映画「紅の豚」が好きな人でこの本を所有していないことは恥ずべきことかもしれない。

 

「カメラマン 2019年12月号」

著者 :
モーターマガジン社
発売日 : 2019-11-20
月カメ年末恒例企画が相変わらず面白い。
写真好き、というよりはカメラ好き諸氏による対談だが、メーカーに対して歯に衣着せぬところが痛快。

全員おしなべて無類のカメラ好きだけあって、フジやニコンの評価は自ずと高くなるものの、各メーカーごとに自由闊達な意見が交わされており、それを俯瞰するのは楽しい。

あまり興味がなかった機材も、今号を読んで俄然欲しくなってしまうところに、今年のホリデーシーズンを改めて実感した次第。

 

「仕事道楽 新版――スタジオジブリの現場」

ジブリスタジオの鈴木Pによる、独占手記のような一冊。

とはいえ、インタビューのような聞き取り形式を文章化しているため、全体の構成や内容に関しては、やや統一感に欠けている印象。

それでも、ジブリの内情を最もよく知る人物の証言として、各作品ごとに語られる逸話の数々は、大変貴重で機知にも富んでいる。

鈴木Pが徹底したリアリストであるが故に、宮崎監督及び高畑監督の情緒的かつ人間的な思考が垣間見れるところも面白い。

鈴木Pは「ジブリの映画はすべて、少年や少女が大人になるころに観るといちばんいい映画」と説き、宮崎監督は「子供たちに『この世は生きるに値するんだ』ということを伝えることが仕事の根幹になければならない」と語っているように、本書から見えてくるのは日本におけるジブリ作品の立ち位置である。

改めて、このスタジオの存在と意義を実感した次第。

個人的には、高畑監督と近藤喜文氏との確執について詳しく知りたかったのだが、残念ながら本書では全く触れられていなかった。
 

「死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相」

ソ連で実際に起きた「ディアトロフ峠事件」の真相に迫った推理系ドキュメンタリー。

全編を通して、綿密な調査に裏打ちされた詳細な記述に圧倒されつつ、様々な仮説が消えては現れ、終盤まで深い霧に覆われたような展開は、やや冗長にも感じてしまった。

推理系であるが故に、本書によって万事解決ということではなく、あくまでも著者による仮説が提示されたに過ぎない。

従って、当該結論に至る過程を楽しむ類いの本であり、公式には完全解決に至っていないことに一定の配慮も必要ではないだろうか。

時に冷戦下のソ連とは、かくも想像力を膨らませる稀有な存在である。

 

「稲川淳二の恐いほど人の心をつかむ話し方 心に残る、響く、愛されるための38の方法」

怪談家・稲川淳二による会話術を網羅した一冊との触れ込みだが、まるで編集者との雑談を書き起こしたような薄い内容となっており、極めて非実用的な実用書である。

当初、こちらが期待していたテクニカルな類いの話はほとんど見当たらず、ファン向けとはいえ、その取り扱いには注意が必要と思われる。

良い意味で、稲川淳二の魅力は毎年の怪談ナイトで十二分に語り尽くされており、本当に彼の話し方を学ぶなら、1度でも多く会場に足を運んで体感すべきだろう。

本書でも座長が語っているように、実際に「耳で見る」ことが肝要である。

 

「神は詳細に宿る」

解剖学者の養老孟司先生によるエッセイ集。
書き下ろしではないので全体の統一感は薄め。

しかしながら、相変わらず説得力のある文脈が心地良い一冊。

「ニュースやインターネットを見て、何か新しいことが起きていると思っていませんか?」
「情報とはすなわち過去である。」

一見して様々な気付きが詰まった本である一方で、ユーモアたっぷりの語り口には思わず笑ってしまう場面も。

 

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