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音楽、映画、ゲーム、ガジェットなどをレビュー。Produced by DJ NeO (NEODEAD)

【書評】2020年1月の読書記録まとめ【16冊】

2020年になってから最初の読書記録をまとめます。

今月は16冊を読み終えて無事にノルマを達成したんだけど、雑誌もあったし、あまりノルマに捕らわれないようにしたい。

むしろ良質な本に出会うことの方が重要で、何冊読んだかよりも、どれだけの知識や情報が身に付いたかどうか、っていうのは出口治明氏も明言してる。

昔から速読はやらない方針なので、じっくりと読んで咀嚼していきたい今日この頃。

数をこなすのとモテてることとは、同じじゃないんだぜ?

それでは簡単な感想とともに、読んだ順から並べます。

 

「魚籃観音記」

新年早々、久々に読んでみた筒井康隆の短編小説集。

個人的に全盛期と思っている「脱走と追跡のサンバ」や「メタモルフォセス群島」及び「宇宙衞生博覧会」と比較すると微かな失速感が否めないものの、全編を通して読み易い語り口と物語への引きの強さは健在である。

そもそも、筒井康隆の素晴らしさは、その過激な文体とは裏腹に冷徹なまでに社会を見つめた批評性にあり、現在85歳という高齢でありながら「老兵、いまだ衰えず」といった具合に現役を続けている姿には、正直言って尊敬の念を禁じ得ない。

それにしても、本作に収録されている「ラトラス」や「ジャズ犬たち」における哀愁帯びた展開には、生粋の筒井ファンでも驚かされること間違いなし。

 

「天才の思考 高畑勲と宮崎駿」

堅苦しいタイトルに身構えてしまうが、中身はジブリの鈴木Pらしく、平易で読み易いエッセイ集。

差し詰め「仕事道楽」の完全版とも言える内容で、各作品ごとに面白いエピソードがたっぷりと収録されているため、ボリュームについても不満はない。(かぐや姫については未収録。)

特に、僕の中で満足に至らなかった作品群に関して、制作過程にどのような経緯があったのか、あくまでも鈴木Pの客観的視点から触れることが出来たのは収穫だった。

さらに制作過程のみならず、その宣伝の手法についても種明かしの如く、本人がつまびらかに明かしていたのも好印象。

監督ではなく、プロデューサーによる回顧録とはいえ、ジブリファンには文句なしにお勧め出来る、痛快な新書である。

 

「私の「戦後70年談話」」

著者 :
岩波書店
発売日 : 2015-07-04
戦後70年を迎えるにあたり、各界の著名人が寄せた「個人的談話」で構成された本。

すでに先の大戦を生きた先人達が少なくなっている中で、こうしてリアルな言葉を紡いで、非戦の意味を改めて世に問うた姿勢は評価に値する。

特に唯一の外国人ダグラス・ラミス氏の談話はアメリカらしい視点に立ったもので、昨今の憲法改正における9条の取り扱いについて、正に核心を突いている。以下に引用する。

「日本の中に一部にしろ憲法と日米安保条約の双方を支持する人がいるかぎり、彼らは立場として戦力の放棄ではなく、戦争は誰かほかの人たちにやってもらうという取り決めを好んでいることは認めねばならない。」

日本の平和は沖縄を米軍に差し出すことで手に入れた砂上の楼閣なのだ。この状況が打開されぬまま、憲法改正に踏み出すことは、もはや国体の自殺とさえ言えるのかもしれない。

 

「マルシェのつくり方、使い方: 運営者・出店者のための教科書」

昨今、全国各地で開催されているマルシェについて、その在り方や開催までの細かな段取りなどを収めたハウツー本。

しかしながら主催者のみならず、出店する側にとっても有益な情報が多く、ひとえに著者の身を以て体験した貴重な経験値によるものだと思う。

個人的に、地方での移住支援に絡める形で、音楽フェスとマルシェの融合を試みており、本書の内容は同じ主催者の立場として非常に共感出来るものがあり、その運営の難しさも含めて大変面白く読ませてもらった。

本書にもあるように、催事は継続性が最も重要であり、それはクラブイベントにしろ、フェスにしろ、マルシェにしろ、全てに共通している。(なぜなら、それが文化の発信源となるからだ。)

そしてまた、マルシェに関してはフリマとは明確に違う価値観を持っていることを、改めて世に示した点は評価に値する。

特に地方において、雨後の筍のように発生した多くのマルシェが、この点を全く理解しないまま運営されている由々しき現状があるからだ。

そういう意味では、マルシェに関わる全ての人々にとって必携の参考書と言えるだろう。

 

「ライブカルチャーの教科書 音楽から読み解く現代社会」

ライブカルチャーという言葉に惹かれて読み始めた本。
話題を音楽に限定しているとはいえ、どこまでその風呂敷を広げるのかお手並み拝見という、失礼ながら斜に構えた態度で読み始めたものの、著者の造詣の深さには恐れ入った。

ただ、参考文献からの引用が多過ぎる気もしたが「教科書」という意味では、ライブを通した音楽カルチャーの変遷の史実が非常によくまとめられており、それはまた新鮮な切り口から「復習」出来たのも良かった。

個人的には、EDMムーブメントにおけるPLURの精神について言及がなかったり、またEDM原理主義者と呼ばれるジャンル論争への踏み込みもなかったため、やや片手落ちといった印象も。

 

「いつまでも見ていたい夢の風景 世界でいちばん美しい街、愛らしい村 〜拡大版〜」

「つちだま」というハンドメイド系のアート作品を製作する上で、そのイメージとなる参考資料として拝読。

その意味で「アルベロベッロ」「サン・クイリーコ・ドルチャ」「スペッロ」「シャウエン」の街並みが大変良かった。

それから「ラルン・ガル・ゴンパ」は1度でいいから撮影してみたいと思った次第。

残念なのは、掲載している写真が少なすぎること。
見開きを減らして掲載数を増やして欲しかった。

 

「監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない」

テレビでもお馴染み、監察医の上野正彦氏による著書。
全て彼の実体験に基づいた短編が9つ収録されている。

タイトルにもあるように、1度は事故死とされた事件などにおいて、自殺や他殺の可能性を探るべく、上野氏が死体を再鑑定していく経緯が詳細に描かれており、裁判において毅然と反証する様子は、まるでドラマを観ているような臨場感さえ漂う。

全体を通して、本書から読み取れるのは、上野氏の静かな怒りだろう。例えばそれは、あまりにも警察の主張に寄り添った法医学の現場に対しても向けられている。

特に、以下の言葉は印象に残った次第。

「私は単に裁判に勝ちたいのではない。一人の大切な人権が知識不足ゆえの理不尽さによって無視されることを恐れるのである。」
「いつでも国家は国民にやさしくなければならない。」

ただ、最後に1つだけ野暮なことを言うと「監察医が泣いた」というサブタイトルは付けない方が良かった。泣くという悲喜の感情からは、恐らく遥か遠いところで、粛々と事実を見つめるのが法医学の現場ではないだろうか。

 

「しんどいオカマのお悩み相談 明るくないし強くもない孤独に苦悩し続けるオカマがひとりの人間として綴る哀憐の讃歌」

長いタイトルが気になって読んでみた本。
中身はオカマによる極めて真面目な人生相談だった。

随所にオカマらしい自虐ネタを挟みつつも、相談者の心を解きほぐすような優しい語り口が、終始テンポ良く記述されており、そのバランス感覚たるや並大抵の文章力ではない。

また、冷徹なまでに自分を見つめた自己批判と、強烈な自己肯定感を身を以て知る著者だからこそ、もののあはれに通じるオカマ哲学がより一層の説得力を増している。

男にも女にもオカマにも、総じて為になる本で間違いないが、著者がアラサーオカマを自称するにはあまりにも達観し過ぎており、その感性の豊さとあふれ出る諸行無常感に、アラフォーノンケの自分は思わず眩暈を覚えてしまった。

 

「iPad完全マニュアル2019」

著者 :
standards
発売日 : 2018-12-19
数年ぶりにiPadを新調したことから、新しい情報を得るために電子書籍にて閲覧。

結果、特に目新しいトピックはなかった。
そもそも新機能についてはApple公式webに書いてある。

果てしなく初心者向けの取扱説明書。

 

「こだわりバカ」

職人のこだわりを検証した店舗経営の話かと思ったら全然違った。
これは企業のキャッチコピーに関する、言葉の本。

経費の使える企業なら広告代理店に丸投げだと思うが、中小零細企業など自社でモノを売る際に、恐らく役立つであろう宣伝コピーの話が終盤まで続く。

川上コピー、空気コピーなど成功と失敗の事例を挙げて解説しているが、全体のボリュームは少ない。

果たして、短文よりも長文にするメリットぐらいしか得るものがなかった。
結局のところ、言葉の選び方のセンスで明暗が分かれる模様。

 

「「食」繁盛店からトレンドをよむ」

セブン&アイホールディングスの顧問を務めるフードコーディネーター、おおやかずこ氏によるエッセイ的な評論本。

様々な店舗の事例を挙げながら、食のトレンドを炙り出していく構成により、概して具体性に富み、説得力がある。

2005年に初版発行の書籍とはいえ、現在でも十分通じる内容であるし、特に後半での「おいしさの絶対追求」については、一片の異論の余地もない。

こうした著者の観察力及び洞察力に舌を巻きつつ、評論本としては主題が重複している場面があり、やや冗長気味に感じてしまった。

 

「ギター・マガジン 2020年2月号」

著者 :
リットーミュージック
発売日 : 2020-01-11
今までありそうでなかった、ジャクソン/シャーベルのギターにフォーカスした特集が素晴らしい。

一見してカタログ的な紹介かと思いきや、各シグネイチャーモデルの本人インタビューが充実しており、スコット・イアン、アンドレアス・キッサー、ジェイク・E・リー、フィル・コリン、ウォーレン・デ・マルティーニ、マーティ・フリードマン、ミック・トムソンなど、往年のHR/HM系著名人が勢ぞろいした誌面は賑やかで楽しい。

思うに、ランディ・ローズがいなければここまで表舞台に上がることはなかったであろう、独立系ギターブランドのジャクソン/シャーベルだが、果たして今やフェンダーとギブソンの2大ブランドと比肩する勢いであることは言うまでもない。

メタルの歴史にジャクソンあり。
シャーベルもまた、同様である。

 

「働き方改革対応! パートタイマーの労務管理と就業規則」

パートタイム・有期雇用労働法の施行が迫っている。

2019年からの働き方改革に伴う内容でもあり、要点確認のために手に取ってみたが、基礎的な内容で、若干の肩透かし。
判例なども取り入れて欲しかったところ。

とりあえず、相談窓口通知文書の作成はやっておきたい。

 

「30分で写真のセンスアップ : 私、写真のセンスがない・・・?と思っているあなたへ」

初心者向けにしても内容が薄い。
いや、超初心者向けともいうべきハウツー本かもしれない。

写真は人に見せるという感動のシェアが根底にある。
自身の記録用なら構図やピントを気にする必要もない。
そしてセンスというのは確かな技術に裏打ちされたものであり、これは経験の蓄積によるものがほとんどだろう。

従ってこのような書籍を読む前に、自分が良いと思った写真を真似する気持ちで撮りまくった方がいい。
現代芸術の全てが引用とアレンジの時代だからこそ、先人を真似することには大きな意義があると思う。
それをオリジナルとして発表するかどうかはまた別の問題。

 

「宮崎駿 (キネ旬ムック―フィルムメーカーズ)」

宮崎駿と養老孟司の対談企画に惹かれて読んだ一冊。
ところが中身はファンコラムやレビューなどが中心で、肩透かし。

唯一の収穫はジブリの制作部長、高橋氏のインタビュー記事。
これまで鈴木Pの書籍で知り得たジブリの内部事情が克明に証言されており、自分の中では鈴木Pの信頼性が高まった模様。

それにしても、せっかくの養老先生の登場なので、もう少し田舎と都市の在り方について宮崎監督と突っ込んだ議論をして欲しかった。

 

「本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法」

小さい頃から本の虫だったという著者が論ずる読書術。
口述を書き起こしているため、内容は平易で読みやすい。

読書がもたらす効能についてはもちろん、多くの書評も掲載されているため、自然と読書欲が増す本である。
もちろん、著者の好みが反映されているので少し偏りがある気もするが、古典に触れる意味などは本質を突いている。

僕が思うに、読書家とは価値観の多様性を理解している人である。
そういう意味では、著者は真の読書家と言えるだろう。

余談だが、音楽にしても映画にしても、様々なジャンルに触れている人が勧める作品こそ面白く、評価の信頼性も高い。

これはDJにも同じことが言える。
しっかりと古典に触れ、誰よりも多くのジャンルを聴くべきだ。

 

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